通貨市場
2022年には米ドル反発が見込まれる
世界経済の回復に伴い、年内は米ドル安が続くとみているが、2022 年には幅広い通貨に対して米ドルの反発を予想する。来年は米ドルの幅広い上昇が予想され、ユーロ、英ポンド、輸出国通貨、新興国通貨に対して一様に影響を及ぼすだろう。ただし、他通貨とは異なり、円は引き続き米ドルに対して下落すると予想する。
2021.05.20
- 世界経済の回復に伴い、年内は米ドル安が続くとみているが、2022年には幅広い通貨に対して米ドルの反発を予想する。
- 2022年には、米国が他の主要国に先行してコロナ対応の金融緩和政策からの転換を図るものと考える。米連邦準備理事会(FRB)は雇用等の堅調な回復を判断材料に、金融政策の正常化に動き始めるだろう。
- 来年は米ドルの幅広い上昇が予想され、ユーロ、英ポンド、輸出国通貨、新興国通貨に対して一様に影響を及ぼすだろう。ただし、他通貨とは異なり、円は引き続き米ドルに対して下落すると予想する。
今回は2022年6月の予想を新たに加えるとともに、米ドルの見通しを変更する。今年については米ドルの下落基調の継続を見込むが、来年は上昇に転じるものと考える。2021年末の予想に変更はなく、ユーロ/米ドル1.25、米ドル/スイス・フラン0.89、英ポンド/米ドル1.49を維持する。ドル/円については、112円から113円へ小幅米ドル高方向に引き上げた。尚、これらの予想はレンジの中心値として示している。為替市場はこれまで以上に政治的要因から大きく影響を受けている。市場では政策見通しに基づいてポジションを変更する動きが広がっており、年初来4カ月間の先進10カ国(G10)通貨の変動にもこうした変化がすでに表れている。来年はFRBが資産購入プログラムを終わらせ、利上げ観測が浮上するとみており、米ドルが強さを取り戻すと予想する。政策の変更は為替相場の大きな変動要因となる。
米国では2021年に入り大規模な財政出動と金融緩和が実施されている。今年の財政支出は昨年と同水準またはそれを上回る予定であり、またFRBもゼロ金利政策を維持する方針である。こうした景気対策を一因にインフレ率は上昇傾向にある。しかし、一部のセクターでは、雇用、売上高等の経済指標が依然コロナ前の水準を下回っており、こうした状況が続く限り、FRBは緩和姿勢を維持するものと想定される。各国の政策支援により世界経済は今後回復の加速が見込まれることから、2021年後半は米ドルは引き続き下落基調を辿ると予想する。