変革的イノベーションへの投資機会
ロンジェビティ
世界的に高齢化が進み、平均寿命が延び、健康寿命への関心が高まる中、我々はロンジェビティ(健康長寿)市場が2023年の5.3兆米ドルから2030年には約8兆米ドルに成長すると予想する。
2025.04.18
- 世界的に高齢化が進み、平均寿命が延び、健康寿命への関心が高まる中、我々はロンジェビティ(健康長寿)市場が2023年の5.3兆米ドルから2030年には約8兆米ドルに成長すると予想する。
- ロンジェビティは、ヘルスケアから高齢者のライフスタイルや経済的ニーズに応えるセクターまで、幅広くバリューチェーンが進化を続ける投資テーマである。その中でも特に注目すべき分野として、ヘルスケア・セクター、不動産セクター、消費関連・金融サービスがある。
- 現在、ロンジェビティ分野のバリューチェーンで特に恩恵を受けているのはヘルスケア・セクターで、市場規模は2030年までに約2.2兆米ドルに拡大すると予想する。
我々は最近、人工知能(AI)、電力と電源に続く3つ目の「変革的イノベーションの投資機会(TRIO)」として「ロンジェビティ(健康長寿)」を発表した。ロンジェビティ市場は、2023年の5.3兆米ドルから2030年には約8兆米ドルに成長すると予想する。ロンジェビティのバリューチェーンが進化する中で、現在および長期的に複数の投資機会があると考える。ロンジェビティの投資テーマでは、推進役として積極的に健康寿命を延ばす企業と、高齢化する人口によるニーズの進化に応える企業の2つに分けられる。
ロンジェビティに投資する理由
高齢者の割合が上昇している。世界の人口は急速に高齢化しており、60歳超の人口は2050年までに倍増して、20億人を超えると予想される。この人口動態の変化は、特に高齢者のニーズに応える分野において大きな機会をもたらす。
平均寿命が伸びている。医学と技術の発展により、平均寿命は大幅に延びた。抗生物質、ワクチン、先進的な外科手術技術などの画期的な進歩により死亡率は劇的に低下した。ワクチンは天然痘、はしか、最近では新型コロナウイルス感染症などの病気を予防することで10億人の命を救っている。寿命が延びるにつれ、退職後の生活の質を高める製品やサービスの需要が高まっている。
健康長寿への関心が高まっている。人々は健康で長生きしたいと願う。診断ツールの改善、予防医療の強化、新薬開発による医学の大きな進歩により、慢性疾患は十分に管理可能になったと言えよう。公衆衛生の取り組みと医療へのアクセスの改善が、健康状態の改善と寿命の延びに貢献している。より健康的な食事や活動の増加などのライフスタイルの変化も、慢性疾患の予防と健康長寿の促進において重要な役割を果たしている。

ロンジェビティの投資セクター
ロンジェビティは、ヘルスケアから高齢者のライフスタイルや経済的ニーズに応えるセクターまで、幅広く進化を続ける投資テーマであるため、柔軟な投資アプローチが重要になる。その中でも特に注目すべき分野として、下記の3つを挙げる。
ヘルスケア・セクター:ヘルスケア・セクターはロンジェビティのトレンドの恩恵が特に大きい分野であり、市場規模は2030年までに約2.2兆米ドルに拡大すると見込まれる。成長の牽引役は、GLP-1受容体作動薬をはじめとした、肥満や糖尿病など代謝性疾患の治療の革新と、がん治療の進歩である。代謝性疾患関連収益とがん関連収益における2030年までの年平均成長率は、それぞれ12%、8%と予想される。さらに、医療機器分野でも大きな成長が期待されており、糖尿病管理関連機器や心血管疾患用医療機器の収益は、それぞれ年平均13%、5%の成長が見込まれる。また、米国で高齢者向け医療サービスを提供すするメディケア・アドバンテージ*のセグメントでは、より充実した医療への需要の高まりから同5.8%の成長が見込まれる。
我々はグローバル株式戦略において、米国のヘルスケア・セクターの投資判断をAttractive(魅力度が高い)としているが、欧州の同セクターについては、関税をめぐる不確実性などを踏まえ、Neutral(中立)に引き下げている。
*高齢者などが対象の米国の公的医療保険プログラム「メディケア」を民間保険会社が代行し提供するもの。基本となる公的プログラムよりサービスや保障が充実。
不動産セクター:不動産セクターは、高齢者人口が増加する中で、アクティブシニア向けの居住型コミュニティ、介護施設、高齢者が過ごしやすいバリアフリー住宅等の需要の高まりから恩恵を受けるだろう。我々は、高齢者向け住宅・施設の2030年までの年平均成長率を約4%と予想する。政策の変化が影響を与える可能性はあるが、長期的な成長見通しはポジティブである。
高齢者向け消費関連および金融サービス・セクター:ウェルネス関連や栄養食品、アンチエイジング製品などを通じて健康的に年を重ねることを支える消費関連セクターの企業は、ロンジェビティのトレンドの恩恵を受け続けるだろう。高齢者がレジャー消費の大きな担い手となるのに伴い、ホテルやレジャー市場も成長が見込まれる。金融サービス業界は、リタイアメント・プランニング(退職後の資金計画)などの分野でロングライフに適した商品の提供を進めている。生命保険会社の2023年の関連収益は5,510億米ドルとされ、2030年までに年平均で約4%成長して約7,000億米ドルに達する見込みだ。美容やレジャーといった分野でのロンジェビティ関連の収益は、現時点では限定的だが、高齢者のニーズに応えることで、将来的にはさらなる成長が期待される。

