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FRBのタカ派姿勢を受け、株式と債券下落

米連邦準備理事会(FRB)は予想通り利下げを実施したものの、同時に発表された経済見通しで2025年の利下げ回数の減少が示唆されたことを受け、18日の米国株式と米国債の価格はそろって下落した。

何が起きたか?

米連邦準備理事会(FRB)は予想通り利下げを実施したものの、同時に発表された経済見通しで2025年の利下げ回数の減少が示唆されたことを受け、18日の米国株式と米国債の価格はそろって下落した。

FRBは、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを25ベーシスポイント(bp)引き下げて4.25~4.50%とした。9月以降3回連続の利下げで、累計利下げ幅は100bpとなった。しかし、政策金利見通し(ドットチャート)の中央値は、2025年における25bpの利下げ回数が2回にとどまることを示しており、9月の前回公表時の4回から減少している。

FRBは声明で、経済活動は堅調なペースで拡大を続けているとし、失業率は低水準で、インフレ率もやや高い水準にとどまっていると指摘した。注目すべきは、2025年末のインフレ率予想が、9月公表時の2.1%から2.5%に引き上げられたことだ。

FRBのパウエル議長は会合後の記者会見で、一部の参加者が、トランプ新政権の発足に伴う政策の不透明感を理由に慎重なアプローチを取ったと述べ、足元の状況を、霧の中を運転する際にスピードを落とすことに例えた。しかしパウエル氏は今回の慎重な見通しについて、インフレ率の鈍化ペースが再び予想を下回ったことが主な理由であると強調している。

S&P500種株価指数は約2.9%下落して5,872となり、米10年国債利回りは11bp上昇して4.5%となった。金利先物市場は利下げ回数の減少を織り込み、2025年末までの利下げ幅は31bpにとどまると予想している。米ドル指数は1.2%上昇した。

何が予想されるか?

経済成長が堅調で、失業率が予想を下回り、インフレ率も9月の経済見通しにおけるFRBの予想を上回っていることを考慮すると、FRBのドットチャートが上方修正されたのは妥当といえる。

パウエル氏は、政策金利が景気を押し上げもせず、抑制もしない中立金利に近づいていることも指摘している。政策金利が中立的な水準に近づくほど、さらなる利下げを正当化するのは難しくなる。FRBによる中立金利の推定値は緩やかに上昇しており、現在は3%に達している。経済が急速な成長を続け、インフレ率もFRBの目標である2%を上回る状態が続けば、現在の中立金利は事後的に推計し直すとより高い水準であったという結果になる可能性がある。

インフレ率が予想を上回るか、トランプ政権の財政調整措置などによる予想外の財政刺激策が打ち出された場合は、FRBは3月の利下げを見送る可能性がある。その場合、年間で100bpの利下げを実現するのは難しいだろう。

FRBはデータに基づいて判断を下すという姿勢を維持しており、今後発表される経済指標が、次の一手を決める上で引き続き重要な役割を果たす。FRBがインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)物価指数の最新の数値は20日に発表される予定であり、今後数カ月でインフレ率はさらに低下すると予想する。労働市場の健全性を示す雇用データも重要なポイントとなるだろう。

投資方針

2025年の利下げペースの鈍化と、FRBのスタンスを市場が織り込み直すことによる短期的なボラティリティ(相場の変動率)の上昇が予想される。しかし、利下げペースの減速が見込まれるとはいえ、FRBが金融政策は引き締め的だと繰り返し述べているように、方向性は依然として明確である。

米国経済の堅調さ、借入コストの低下、米国企業の利益成長拡大、人工知能(AI)の収益化の進展、トランプ次期政権下での資金調達活動拡大の可能性などにより、米国株式にとって魅力的な要素が整っていると考える。S&P500種株価指数は2025年末までに6,600に達すると予想しており、米国株式への投資配分比率が低い投資家は、短期的な相場の変動局面を利用して、エクスポージャーを追加するとよいだろう。

投資家には、余剰キャッシュを高クオリティ債や分散型債券投資戦略、一部の株式インカム戦略などに回すことも勧める。2025年には利下げがさらに進むと予想され、キャッシュのリターンは低下する見通しであるため、これらの戦略を通してインカムを創出し、ポートフォリオの分散効果を高めることができる。

ヘッジファンドやプライベート市場などのオルタナティブ投資で分散を図ることも有益であると考える。例えば、ヘッジファンドの戦略の1つである株式マーケット・ニュートラル戦略は年初来で10.2%上昇しており、2000年以来の最高の年間パフォーマンスを記録する勢いである(HFRI EH : 株式マーケット・ニュートラル指数に基づく)。ただし、オルタナティブ投資には、流動性の欠如など特有のリスクが伴うことに留意が必要だ。

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本稿は、UBS AGが作成した“CIO Alert :Equities and bonds fall on hawkish Fed projections” (2024年12月18日付)を翻訳・編集した日本語版として2024年12月19日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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