ドル円

引き続き変動幅の大きい1年の見通し

トランプ次期政権の政策で米国金利の高止まりが見込まれることから、我々はドル円の予想値を引き上げた。短期的には158~160円へ上昇する可能性があるものの、2025年は徐々に下落すると予想する。

  • 我々は2024年12月、2025年3月、同6月、同9月のドル円の予想値を、それぞれ155円、152円、150円、147円に引き上げた(従来は各147円、143円、140円、138円)。また、新たに2025年12月の予想を追加し、145円とする。
  • 米国10年債利回りが30~40ベーシスポイント(bp)上昇して4.8%に達すれば、ドル円は短期的に158~160円へと上昇する可能性がある。我々は、米国10年債利回りとドル円のいずれも、これを上値として中期的には反転するとみている。
  • 政治的観点から見ると、トランプ次期大統領は以前、過度な円安を批判しており、日本の政策当局も160円を超える円安は容認しがたいだろう。円の上昇は日米双方にとってプラスとみられる。

ドル円と米国債利回りの下落は後ずれする見通し

我々は2024年12月、2025年3月、同6月、同9月のドル円の予想値を、それぞれ155円、152円、150円、147円に引き上げた(従来は各147円、143円、140円、138円)。また、新たに2025年12月の予想を追加し、145円とする。今回の予想値引き上げは、トランプ前大統領の返り咲きが決まり、連邦議会の上下両院でも共和党が多数派を占めることが確実になったことで、その政策の傾向から、米国金利が長期間高止まりする可能性を反映したものである。

米国債利回りが上昇し続けた場合、ドル円が短期的に158~160円まで上昇する可能性は排除できないだろう。過去3年間の感応度分析によれば、米国と日本の10年債利回りの差が10bp広がると、ドル円の為替レートが1円上昇している。これを踏まえると、米国10年債利回りが短期的に急上昇して4.8%に到達すれば、ドル円が158~160円の上値を試す展開もあり得る。160円台をつけた場合には、今年4月、5月、7月に見られたように、日本政府および日銀が口先介入または実際の介入を行う可能性が高いと考えている。

しかし、ドル円は短期的に上昇する可能性はあるものの、我々は2025年を通して徐々に下落すると予想する。第1に、米連邦準備理事会(FRB)は利下げサイクルに入っており、現在の我々の基本シナリオ(2025年に合計100bp)より緩和ペースが落ちても、米国債利回りは低下すると考えている。第2に、現在のドル円の水準は、日米金利差から考えて割高だとみている。日米間の10年実質金利差は、ドル円が145~146円に向けて下落する余地があることを示唆する(図表1参照)。第3に、貿易摩擦の激化と、その世界経済への影響に対する懸念の高まりは、2025年の円高要因にもなる。実際、2018~2019年の米中貿易摩擦の後期には、円は対米ドルで約5~6%上昇した(図表2参照)。そして第4に、政治的観点から見ると、トランプ次期大統領は以前、過度な円安を批判しており、日本の政策当局も160円を超える円安は容認しがたいだろう。円の上昇は日米双方にとってプラスとみられる。

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本稿はUBS AG Singapore Branch、UBS Switzerland AGおよびUBS AG Hong Kong Branchが作成した“USDJPY : Another year of big swings”(2024年11月14日付)を翻訳・編集した日本語版として2024年11月15日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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