日本株式

中国株式の上昇は日本株式にネガティブなのか?

中国株式が上昇する中、投資家は日本から中国への投資資金の流出を懸念しているが、中国経済が回復し、中国企業の1株当たり利益(EPS)が拡大するならば、影響は限定的と我々は考える。

  • 中国株式が上昇する中、投資家は日本から中国への投資資金の流出を懸念しているが、中国経済が回復し、中国企業の1株当たり利益(EPS)が拡大するならば、影響は限定的と我々は考える。
  • 我々の試算では、日本企業の売上高に占める中国の割合は1桁%後半であり、中国経済の長期的な回復は、日本株式にとっても追い風になる。
  • パンデミック前は、中国株式のEPS成長に合わせて日本企業の利益も拡大し、株価は上昇した。

我々の見解

長引く景気低迷を受けて、中国当局が経済支援の強化を発表した。中国の景気刺激策が日本の株式市場に与える影響は3つ考えられる。

  1. 資金流出リスク:投資家が日本株式から中国株式へと資金を移すリスクがある。
  2. 中国経済の成長:中国経済の成長は、関連する日本企業の業績や株価に影響する。
  3. 世界的なリスクセンチメントの改善見込み:中国の緩和的な金融政策が牽引役になり、世界的にリスクオンの地合いをもたらす可能性がある。

中国企業のEPSが拡大すれば、日本から中国への投資資金流出の影響は限定的

中国経済と中国株式の回復期待に伴い、一部投資家は日本株式から中国株式への資金流出を懸念している。中国株式がバリュエーション主導で上昇した2022年8月、2023年1月、2024年5月に見られたように、短期投資家が中国以外のアジア株から中国株式へと資金をシフトする可能性は広く認識されている(図表1参照)。

だが、長期的に見ると、日本株式と中国株式が必ずしもこれと同じパターンを辿っているわけではない。むしろ、日本株式と中国株式が足並みをそろえていた時期の方が長い(図表2および3参照)。

とりわけ、中国株式のEPSが拡大した2015~2017年には、日本株式のEPSも増加し、株価も上昇した。中国政府の政策が経済を再び活性化させ、企業のEPSを押し上げ始めれば、日本株式は長期的に中国経済の回復から追い風を受けると考える。

長期的な恩恵が最も大きいのは中国エクスポージャーの高い銘柄だろう

中国に対する日本企業の直接的なエクスポージャーは、売上高全体の約3.4%と、特に大きいわけではない(図表4参照)。それに比べて、工作機械、半導体製造装置、自動車部品、素材・化学セクターなどのサプライチェーンを通じた間接的なエクスポージャーはかなり大きいと考えられ、売上高の1桁%後半を占める。

例えば機械セクターでは、中国に対する直接的なエクスポージャーは売上高の10%にも満たないが、日本の工作機械受注の2割超が中国からである。こうした産業セクターには大型株が多いことから、中国経済の拡大は、一部セクターの利益成長や日本株式全体のEPSに大きく影響するだろう。

UBS CIOの中国株式チームは、中国の政策当局の姿勢は積極的になりつつあるものの、これが中国経済の抜本的な改善につながるかどうかは、追加財政刺激策の規模と政策実行の成否にかかっていると考えている。

ここ3週間、中国向け売上げの割合が大きい日本企業のパフォーマンスが、市場全体を大きく上回っている(図表5参照)。だが、10月後半に第2四半期(7-9月期)の決算発表シーズンが始まると、実際の業績が期待に満たず、短期的に株価が下落する企業もあるだろう。

事実、中国向けが売上げ全体の約2割を占めるロボット大手が、10月4日に第2四半期(6-8月期)決算を発表したが、中国向け売上げに回復の兆候が見えず、株価は7%下落した。決算発表前には、中国に関する地合い改善への期待から、同社株価は17%上昇していた。

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本稿は、UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社が作成した“Japanese equities : Is a China rally negative for Japanese equities?”(2024年10月9日付)を翻訳・編集した日本語版として2024年10月15日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
小林 千紗

UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社
チーフ・インベストメント・オフィス
ストラテジスト

小林 千紗

さらに詳しく

チーフ・インベストメント・オフィスにて、ストラテジストとして株式の調査分析、テーマ投資、SI投資などを担当。投資銀行部門での経験を活かし、幅広い業種についてマクロ・ミクロの視点から投資見解を提供している。


2013年11月に入社。それ以前は米系・欧州系証券会社にて株式アナリストを務める。

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