グローバル不動産市場

UBSグローバル不動産指数 2024年

『UBSグローバル不動産指数』の調査対象都市の不動産市場の過熱リスクは、平均して2年連続で若干低下した。市場の不均衡度合は欧州が概ね低下し、アジア太平洋は安定しており、米国は悪化した。過熱リスク・スコアが最も高かったのはマイアミだった。東京とチューリッヒも、「高」リスク領域となった。

  • リスクの変化:不動産市場の不均衡度合は、欧州で低下し、アジア太平洋は安定しており、米国は悪化した。今年の過熱リスク・スコアはマイアミが最も高くなり、ドバイが2023年央以降最も大きく上昇した。
  • 過熱していた一部の市場で大幅調整:価格不均衡が何年にもわたり大きく悪化した都市では、実質住宅価格が2021年央以降20%下落した。その他の調査対象都市では、下落幅は平均で2%だった。
  • 調整局面の終了:実質住宅価格は昨夏に比べて平均2%上昇した。しかし、価格変動は一様ではない。実質価格はパリと香港で約10%下落し、ワルシャワとドバイは2桁の上昇率を記録した。
  • 住宅不足:融資条件が厳しくなったことから、大半の都市で建築許可件数が減少した。実質賃料の上昇率はほとんどの都市で加速し、過去2年の平均上昇率は5%を超えた。
  • 市場は低迷:買い手は金利上昇前の2021年に比べて40%狭い住宅しか買うことができない。そのため不動産購入が減少し、住宅ローン残高の伸び率が急減した。
  • 流れが変わった:借入費用の低下に伴い住宅需要が底打ちしていくことから、価格の伸び率は加速すると見込まれる。経済成長が価格動向に大きな影響を及ぼすだろう。

沈静化が進む

『UBSグローバル不動産指数』の調査対象都市の不動産市場の過熱リスクは、平均して2年連続で若干低下した。地域別の様相はまちまちで、市場の不均衡度合は欧州が概ね低下し、アジア太平洋は安定しており、米国は悪化した。

今回の調査対象の都市の中で、過熱リスク・スコアが最も高かったのはマイアミだった。東京とチューリッヒも、「高」リスク領域となった。尚、チューリッヒは昨年に比べるとスコアが大きく低下した。ロサンゼルス、トロント、ジュネーブの過熱リスクは「上昇」の領域となった。

一方、アムステルダム、シドニー、ボストンは「中」程度となった。フランクフルト、ミュンヘン、テルアビブ、香港も不均衡が大きく改善して中程度となったほか、バンクーバー、ドバイ、シンガポール、マドリードも同じ領域に入った。ドバイは、調査対象都市の中で過熱リスク・スコアが最も大きく上昇した。

サンフランシスコとニューヨークは「低」リスクの領域となった。欧州では、ロンドン、パリ、ストックホルム、ミラノもリスク・スコアが一段と低下し、低リスクとなった。ワルシャワも低リスク領域にある。サンパウロは調査対象都市の中でリスク・スコアが最も低くなった。

過熱と沈静

調査対象都市における足元の実質住宅価格は、世界的に金利が急速に上昇し始めた2022年央の水準に比べて平均約15%低い。価格が特に大きく下落した都市は、それまで数年の間に不動産の過熱リスクが高まっていた都市だ。フランクフルト、ミュンヘン、ストックホルム、香港、パリの実質価格は、パンデミック後のピークから20%以上低い水準にある。バンクーバー、トロント、アムステルダムの実質価格は10%近い大幅な下落率を記録した。

総じて、過去4四半期は住宅価格の伸びが弱かったといえるが、パリと香港については大幅下落が続いた。一方、人気の高いドバイとマイアミは住宅価格が引き続き大きく上昇した。また、バンクーバー、シドニー、マドリードのように住宅不足が顕著な一部都市では、実質価格が昨年に比べ5%を超えて上昇した。

過熱リスクの把握:不動産市場の過熱は繰り返し発生する現象である。過熱という言葉は、資産価格の理論値からの大幅かつ持続的な乖離を意味する。実際に過熱状態かどうかは、急激な価格の下落が起きない限り確かめることはできないが、過去のデータを見ると不動産市場が過熱するパターンがあることがわかる。典型的な兆候として、住宅価格の地域所得や賃料からの乖離、過剰な融資や建設活動等の実体経済の歪みが挙げられる。『UBSグローバル不動産指数』はそうしたパターンに基づいて不動産市場の過熱リスクを評価するものである。同指数は価格調整が起きるか否か、またいつ始まるのかを予測するものではない。マクロ経済モメンタムの変化、投資家センチメントの変化、または大幅な供給拡大が要因となり、住宅価格は下落する可能性がある。

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本稿はUBS Switzerland AG、UBS AG Singapore Branch、UBS AG Hong Kong Branch、 UBS AG London Branch、UBS Financial Services Inc. (UBS FS)が作成した“UBS Global Real Estate Bubble Index”(2024年9月23日付)を翻訳・編集した日本語版として2024年10月11日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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