ドル円

ドル円はどこに落ち着くのか?

円高ドル安が加速している。世界的なリスクオフと米国の景気後退懸念の強まりを受けてドルが売られ、円売りポジション解消の動きに拍車がかかったためだ。

  • 円高ドル安が加速している。世界的なリスクオフと米国の景気後退懸念の強まりを受けて、円売りポジション解消の動きに拍車がかかったためだ。
  • 我々は、米連邦準備理事会(FRB)による年内の利下げ幅予想を従来予想の50ベーシスポイント(bp)から100bpに引き上げた。これを踏まえ、ドル円見通しも、2024年9月、12月、2025年3月、6月の予想をそれぞれ147円、147円、143円、140円に引き下げた。

20円超の急落後、ドル円相場は一旦落ち着く見通し

直近の米国雇用統計を受けて米国の景気後退懸念が強まり、世界的なリスクオフが増幅されて、円高ドル安が急速に進行した。7月の米国非農業部門の雇用者数は事前予想を下振れ、失業率も4.3%と、予想以上に上昇し、2021年11月以来の高水準となった。これにより米国2年国債と10年国債の利回りは、この2日間でそれぞれ50bpと30bp急低下した(債券価格が急上昇)。金利先物市場が現在織り込むFRBの年内利下げ幅は120~130bpで、7月初めのわずか45bpから大幅に拡大している。

弱い雇用統計を受けて、我々は年内の利下げ幅予想を100bpに引き上げた(9月に50bp、11月と12月に各25bpずつ)。これを踏まえ、ドル円の見通しについても、2024年9月を147円(従来は158円)、12月を147円(同155円)、2025年3月を143円(同153円)、6月を140円(同150円)に引き下げた。我々は、市場の現在の利下げ織り込みは(我々の予想と比較して)行き過ぎとみており、ドル円は今後数カ月で145~150円の水準に落ち着くと見込んでいる。米国債のさらなる利回り低下がないかぎり、日米の金利差からみても、140円の水準がドル円の強力な下値支持線になると示唆される。

日本側の要因からも、ドル円相場は一旦安定に向かうと見込まれる。特に今回の日銀の利上げ発表後に急速な円高ドル安進行が確認されたことから、(一部ではさらなる利上げ観測もあるが)日銀は年内のさらなる利上げを控えると我々は予想する。日銀は7月の利上げ決定にあたり、円安による輸入物価上昇の上振れも考慮したと述べたが、今回の急激な円高で、さらなる利上げの根拠も弱まったからだ。日本の政府関係者からも今回の急激な円の動きを警戒する声が出始めており、鈴木俊一財務相は5日、「通貨の動きは安定的に推移することが望ましい」と指摘し、引き続き為替市場と株式市場の動向に緊張感をもって注視していくと強調した。また、林芳正官房長官は1日、「為替相場は安定的に推移することが重要」とし、「市場動向をしっかりと注視していきたい」と述べている。最後に重要なこととして、ドル円が足元で142円台に急落しており、市場では、積み上がっていた円売りポジションの解消が進むと予想される。だが、米国や世界の景気悪化が深刻化するリスク・シナリオを除けば、市場での円のポジションがネットロング(買い越し)に転換することはないと予想する。

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本稿はUBS AG Singapore BranchおよびUBS Switzerland AGが作成した“USDJPY: Where will it stabilize?”(2024年8月5日付)を翻訳・編集した日本語版として2024年8月6日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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