マンスリーレター4月号

次のステージに向けて

第1四半期も終わりに近づく中、株式市場は活気づいており、米国経済の力強さによって、市場が期待する利下げ幅は低下している。第2四半期に目を向けると、主要中央銀行による利下げサイクルの開始と、人工知能(AI)を活用する企業の広がりという2つの大きな相場変動要因が、次のステージの鍵になりそうだ。

  • テクノロジー株への配分を最適化する:投資家はテクノロジー・セクターへの戦略的な分散投資を行いつつ、過度な集中投資のリスクに注意する必要がある。
  • 安定した収入源を確保する:FRBを始めとする主要中央銀行による年内の利下げ開始が見込まれるため、投資家にはポートフォリオの安定した収入源を確保することを勧める。
  • バランスの取れたアプローチ:短期的な相場変動を乗り切り、資産を長期的に成長させるためには、異なる資産クラス、地域、セクターへの分散投資が最善の方法と考える。
  • 資産配分:株式では、高クオリティ銘柄を選好し、米国テクノロジー・セクターへの強気の見方を維持する。債券でもクオリティを重視する。

1–3月期(第1四半期)も終わりに近づく中、株式市場は活気づいており、米国経済の力強さによって、市場が期待する利下げ幅は低下している。地政学上の不透明感が漂っているものの、市場のボラティリティは依然として低水準にある。第2四半期に目を向けると、主要中央銀行による利下げサイクルの開始と、人工知能(AI)を活用する企業の広がりという2つの大きな相場変動要因が、次のステージの鍵になりそうだ。

以上を背景に、投資家は次の3点に注意を向けるのが得策と考える。1)テクノロジー・セクターへの資産配分を適切に行う、2)ポートフォリオの安定的な収入源を確保する、3)ポートフォリオの有効なリスク管理手法を採用する。

では、具体的にどうすればよいのか?

第1に、テクノロジー・セクターと、テクノロジーのディスラプション(創造的破壊)から勝ち残りそうな銘柄群への戦略的(中長期)な分散投資を行うことが重要である。我々は、世界のテクノロジー・セクターの今年の増益率を18%と予想すると同時に、AI業界が今後5年間で年率72%の増収率を達成するとみている。AIとその影響をめぐる熱狂ぶりを見ると、その果実が予想より早く得られる可能性もある。資産の成長には、この分野のポジションを確保することが得策だ。

だが同時に、AI関連株が大幅上昇した後は、ポートフォリオの過度な集中リスクも高まっている。分散投資を図りたい投資家は、テクノロジー株以外にも、さまざまな地域の高クオリティ銘柄、エネルギー転換やヘルスケアのディスラプション、水資源不足といったAI以外の成長テーマ、中小型株などにも投資機会がある。

第2に、米国経済がなお堅調でインフレ率は予想外に上振れしているものの、米連邦準備理事会(FRB)は今後数カ月以内に利下げに転じ、初回は6月となる可能性が高いとみている。3月に25ベーシスポイント(bp)の利下げを発表したスイス国立銀行に続き、他の主要中央銀行も金融緩和に舵を切ろうとしている。したがって、ポートフォリオの構築にあたっては、投資家は積極的に現在保有しているキャッシュやマネー・マーケット・ファンド(MMF)を、定期預金、短期の債券ラダー(満期の異なる複数の債券を組み合わせて投資する戦略)、クオリティの高い中期債といった安定した収入を確保できる資産へと移すことが望ましい。主要国通貨間の為替レートも、最近の取引レンジ内の推移が予想されるため、投資家には戦術的(短期)な通貨取引を利用して追加的な収入を獲得する機会になるだろう。

第3に、有効なリスク管理が鍵だ。利益を確定するか、様子見の姿勢を取ってリスクを減らしたくなる誘惑は強いかもしれないが、過去のデータはバランスの取れた戦略をとる投資家が有利であることを示している。異なる資産クラス、地域、セクターへの分散投資を実施してこそ、投資家は短期的な相場変動を乗り切りながら、資産を長期的に成長させられると考える。

本レターのこれ以降のセクションでは、次の3つの投資家の疑問に答えていきたい。1)テクノロジー株はバブル状態なのか、投資家はどう対処すべきか?、2)米国経済はソフトランディング(軟着陸)それともノーランディング(無着陸)か、そしてFRBは次にどこへ向かうのか?、3)市場が最高値圏で推移する中、リスクをどう管理するか?

テクノロジー株はバブル状態なのか、投資家はどう対処すべきか?

世界のテクノロジー・セクター(MSCIオール・カントリー・ワールド(MSCI ACWI)IT指数)は、2023年に50%上昇した後、年初来でさらに12%上昇した。巨大テクノロジー企業の中には、年初来で82%上昇している米半導体企業もある。現在の状況はバブルなのだろうか?

単純に1年間の利益予測に基づくと、テクノロジー・セクターは過去の実績と比較して割高に見える。12カ月予想株価収益率(PER)は26.8倍と、長期平均よりもおよそ37%高い。だが、2000年のITバブル時にナスダック100指数が高値をつけた時に記録した約60倍に比べると、これでもまだ低い。しかも、今回は業績の裏付けが当時よりしっかりしている。時価総額が最大級の巨大企業は、当時よりも利益率が高く、バリュエーションが低いのだ。しかもこうした企業の多くが市場において圧倒的なポジションを確立している。業界内の大手企業の多くは、AIバリューチェーンの複数の段階ですでに重要な役割を果たしているため、AIの発展が続くことで、さらに大きく成長する可能性が高い。

結局のところ、テクノロジー・セクターが割高かどうかは、投資家がこのセクターの成長見通しをどう考えるかによる。年初時点で、我々は世界のAI業界の収益予想を40%引き上げた。我々の現在の予想では、AIへの需要は今後5年にわたり年率72%で成長を続け、現在の15倍に達すると見込んでいる。比較のために紹介しておくと、スマートデバイス業界の収益が15倍になるには10年以上かかった。AIはわずか5年の見通しだ。我々の予想が正しければ、AIインフラストラクチャー企業のバリュエーション(MSCI ACWI IT指数に基づく)は、2027年の予想PERがわずか20倍だ。

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本稿はUBS AGが作成した“Monthly Letter: The next stage”(2024年3月21日付)を翻訳・編集した日本語版として2024年3月28日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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