マンスリーレター1月号

ポートフォリオの「新年の抱負」

新しい年の始まりは、過ぎ去った1年を振り返り、これからの計画を立てる時だ。本レターでは、我々が名付けた「新しい世界」に向けた10の「新年の抱負」を紹介する。

  • 2024年の計画を立てる:投資家は、今こそバランスを整え、流動性を管理し、自らの投資目標を達成するための戦略を立てる時だ。
  • クオリティを重視する:2024年は株式、債券ともにプラスリターンを上げると予想する。だがどちらの資産クラスでも、クオリティに注目することを勧める。
  • ディスラプションのリーダー企業を選別する:テクノロジー及びその他の産業における創造的破壊のトレンドは、長期投資の魅力的な機会を作り出すだろう。
  • 資産配分:債券を引き続きオーバーウェイトとする。株式では、米国のテクノロジー・セクターなどを選好する。

激動の1年が終わろうとしている。記録的な利上げペースにより、債券利回りは16年ぶりの高水準に押し上げられた。米国経済は景気後退が予想されていたが、7–9月期(第3四半期)には年率5%成長を遂げた。生成AI(人工知能)のイノベーションが、株式市場の大幅上昇を牽引した。エネルギー生産地域に影響を及ぼす2つの紛争(ロシア・ウクライナ紛争とイスラエル・ハマス紛争)に市場の注目が集まった。

新しい年の始まりは、過ぎ去った1年を振り返り、これからの計画を立てる時だ。本レターでは、我々が名付けた「新しい世界」に向けて、投資家がポートフォリオを構築するために、10の「新年の抱負」を紹介する。

  1. 家族や友人たちと過ごす時間を増やす – 実り多き1年になるように

  2. ヨガに取り組む – バランスをとり、規律を守りつつ機動的に動く

  3. 量よりも質 – 債券、株式ともにクオリティを重視する

  4. 変化を受け入れる – ディスラプションのリーダー企業を選別する

  5. 雨の日に備える – 市場リスクをヘッジする

  6. 1つのカゴにすべての卵を詰め込まない – 非伝統的債券投資で分散を図る

  7. 物事を両面から捉える – 通貨とコモディティはレンジで取引する

  8. 長期的な視点を持つ – プライベート市場で成長を捉える

  9. 計画を立てる – 目標達成への戦略策定が重要

  10. 機会を逃さない – 流動性を管理する

新年を迎えるにあたり、我々は、相対的にクオリティの高い債券を選好する。この資産クラスでは、経済成長が減速する環境下でも依然として魅力的な利回りを確保しつつ、価格の上昇が期待できる。2024年に債券利回りが下がれば株式の下支え材料になるだろう。

株式では、幅広いセクターで高クオリティ銘柄に投資機会が見出せる。特に米国のテクノロジー・セクターは、景気が軟化しても利益成長が期待できる。

長期的には、テクノロジーをはじめとする複数の産業に創造的破壊(技術革新)が起き、公開市場でもプライベート市場でも魅力的な投資機会が生まれると予想する。

「新年の抱負」

1.家族や友人たちと過ごす時間を増やす – 実り多き1年になるように
新型コロナウイルスのパンデミックは幅広く経済に影響をもたらした。人類史上、パンデミックによって各国政府が経済を強制的かつほぼ世界同時に封鎖し、その後の景気対策で生き返らせたことは、いまだかつてなかった。結果としてインフレが復活し、労働市場が逼迫し、金利、債券利回り、そして政府債務が急上昇し、その影響はなお続いている。

こうした状況は我々を新しい世界へと導いた。多くの人々が、家族や友人たちと時を過ごすことの重要性を再発見したのである。消費者が休暇時の出費を積極的に優先したり、大型休暇中の空の便の利用が復活したりといった事実が、それを物語っている。米運輸保安局(TSA)によると、感謝祭後の日曜日(11月26日)に米国の空港を利用した旅客数は290万人を超え、1日あたりの旅客数の新記録を更新した。

2024年は、米国での消費者行動が重要になるだろう。例えば大切な人に会いに行くといった行為に伴う継続的な支出が、米国経済のソフティッシュランディング(揺れを伴う軟着陸)達成に寄与するからだ。

2.ヨガに取り組む – バランスをとり、規律を守りつつ機動的に動く
ヨガはバランス、強さ、柔軟性を改善するための心と身体の運動だが、この3つは長期的に強靭なポートフォリオを構築しようとする投資家にとっても重要である。バランスの取れたポートフォリオというコンセプトは分散投資の原則に根ざしている。すなわちリターンを獲得してリスクを管理するために多種多様な資産に投資対象を広げるということだ。11月に、株式60%/債券40%のポートフォリオ(MSCIオール・カントリー・ワールド指数(現地通貨建て)に60%、ブルームバーグ・グローバル総合債券指数に40%を投じたポートフォリオ)のパフォーマンスが6.9%と、3年間で最高の月次パフォーマンスを達成した。インフレ率が鈍化して2024年の利下げ観測が浮上したため株式と債券は共に上昇した。

バランス型ポートフォリオへの投資に適さない時期はない。とは言え、株式、債券およびオルタナティブ資産全般についての2024年の見通しが明るいことや、我々の主要なリスクシナリオでは株式と債券で相互に分散効果が期待できることを考慮すると、ポートフォリオのバランスを図る好機が訪れていると考える。

ただし、適切なバランスは出発点にすぎない。規律を守ることも長期的に投資を成功させる鍵となる。「コア」戦略が適切ならば、「重要なのは投資のタイミングではなくタイム、すなわち投資を継続する時間である」という投資格言は、長期的に見れば正しい。だが一方で、市場は絶えず動き、投資家のニーズは変化する。したがって、投資家は戦略的(中長期的)および戦術的(短期的)資産配分、そして「サテライト」部分の投資アイデアを定期的に見直す必要がある。

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本稿はUBS AGが作成した“Monthly Letter: New Year’s portfolio resolutions”(2023年12月7日付)を翻訳・編集した日本語版として2023年12月13日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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