House View Weekly
インフレは中銀の利上げ前にピークアウトか
先週の株式市場は欧米のインフレ減速を示す兆候を受けて上昇し、S&P500種株価指数、ユーロ・ストックス50指数ともに上昇した。
2023.01.09
今週の要点
インフレは中央銀行の利上げ前にピークアウトするだろう
先週の株式市場は、欧米のインフレ減速を示す兆候を受けて上昇した。S&P500種株価指数は1.5%、ユーロ・ストックス50指数は5.9%、いずれも上昇した。米国では、6日発表の昨年12月の雇用統計で平均時給の伸びが縮小し、また同日発表の米供給管理協会(ISM)製造業景況感指数が2016年以来 の最低水準(パンデミック期を除く)に低下したほか、同サービス業指数は予想外の縮小を示した。一方、ユーロ圏の12月の総合消費者物価指数 (HICP)は、前月の前年比10.1%から9.2%に鈍化した。
だが、米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)はタカ派姿勢を継続する可能性が高い。12月のユーロ圏の食品とエネルギーを除くコアインフレ率は実質的に上昇しており、上述のHICPは、ドイツがエネルギーに対する補助金を導入したことで低下している。米国の労働需要も依然として供給を上回っており、12月の失業率は50年ぶりの低水準となる3.5%で、11月の失業者1人当たりに対する求人数は1.74だった。
また、両中銀は利上げ停止を判断するにはインフレ鈍化のより明確な証拠が必要だと引き続き強調している。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録も、「金融環境の正当化されない緩和」がFRBによる物価安定回復に向けた取り組みを複雑にするリスクを警告した。
要点:マクロ経済環境は持続的な株高に向けた態勢が整っているとは言えず、我々はディフェンシブ(保守的)な投資スタンスを継続する。
2023年は原油が反発する見込み
2022年は原油価格が大きく変動し、年末までに年初来上げ幅の大半を失ったが、2023年に入っても下落基調が続いている。中国の急速な経済活動の再開で感染が急拡大し、移動が制限され、原油需要が低下するとの懸念から、ブレント原油価格は先週8.5%下落した。天然ガス価格の下落もまた、地合いを一段と悪化させた。
感染拡大は短期的には足かせとなるだろうが、今年の原油需要は、徐々に始まったアジアと中国の経済活動の再開が大きくけん引し、日量160万バレル増加することが予想される。需要に供給が追い付かず、経済協力開発機構(OECD)諸国の商業用在庫と戦略在庫のさらなる急激な低下につながると予想される。両在庫は現在、2004年以降で最低水準まで減少している。
また、ロシアは、EUによるロシア産原油の輸入禁止措置で喪失した欧州需要に替わる買い手を探すのがますます難しくなるだろう。ロシアの産油量は減少する一方、非OPECプラスの増産は弱まる可能性がある。
要点:UBS CMCI エネルギー・トータル・リターン指数は、2021年は61%、2022年は42%上昇したが、2023年も好調に推移すると予想する。原油および石油製品がパフォーマンスをけん引する一方、米国の天然ガスはリターンに貢献しないだろう。今年はブレント原油価格が1バレル当たり110米ドルに上昇すると予想しており、これがエネルギー株を押し上げるとみている。
中国の急速な経済再開により投資見通しは改善
ゼロコロナ政策について、中国は感染のピークが過ぎた都市については我々がこれまで想定していた段階的な緩和ではなく、一気に撤廃することを選択したようである。当初の感染拡大が経済に及ぼすダメージは、2022年10-12月期(第4四半期)と2023年第1四半期に集中して現れると考える。感染者数は旧正月の連休後に安定化し、消費と経済活動の回復は2月にも始まるとみている。
このため本格的な経済再開は2023年第1四半期に始まり、中期的な投資見通しにとって幸先の良い予兆となるだろう。中国の経済再開の勢いが増すにつれ、株価の上昇についての焦点は「いつ」から「どの程度」に移っている。今後6~12カ月の間、経済再開の恩恵を受ける一部銘柄は、中国株式市場全体に対する超過リターンが2桁に上る可能性がある。
我々の見解:中国では、医薬品、医療機器、消費財、インターネット、運輸、資本財、素材セクターが段階的な経済再開の恩恵を直接受けると考える。中国の社債については、不動産企業の投資適格社債の見通しを以前よりもポジティブにみるほか、一部のハイイールド債は割安で投資価値があるとみている。社債全体では、投資適格社債の魅力度が高いと考えており、またアジア・ハイイールド債の2023年の トータル・リターンは7~10%と予想する。原油および人民元も、中国の急速な経済再開が追い風になると考える。