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利上げ懸念後退で株価上昇

6日の米国株式相場は、賃金の伸びの減速を受け米連邦準備理事会(FRB)による今後の利上げ幅をめぐる懸念が後退したことから上昇した。

何が起きたか?

6日の米国株式相場は、賃金の伸びの減速を受け米連邦準備理事会(FRB)による今後の利上げ幅をめぐる懸念が後退したことから上昇した。サービス・セクターの活動を示す指標が大幅に低下したことも、FRBの利上げサイクルが一巡しつつあるかもしれないとの投資家の認識を強めた。

6日のS&P500種株価指数は2.3%上昇し、全セクターが上昇した。ハイテク銘柄が大半を占めるナスダック総合指数も2.6%上昇した。

景気減速の兆候を受け、債券利回りは低下した。米国10年国債利回りは16ベーシスポイント(bp)低下の3.56%、2年国債利回りは20bp低下の4.26%となった。フェデラルファンド(FF)金利先物が織り込む利上げの最終到達地点とされる6月の予想水準は、6日の午前中時点の5.04%から4.96%に低下した。

米ドルも下落し、米ドル指数(DXY指数)は1.1%低下の103.91となった。

6日に発表された12月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が22.3万人増となり、市場のコンセンサス予想の20.3万人増を上回ったものの、2020年12月以降ではもっとも低い水準となった。平均時給は前月比0.3%増と緩やかな水準となり、前年同月比では4.6%と11月の5.1%から低下した。11月の数値はともに下方修正された。

米供給管理協会(ISM)の12月のサービス業購買担当者景気指数は49.6と、11月の56.5から低下した。市場のコンセンサス予想の55を大きく下回った上に、2020年5月以降で最も低水準となった。新規受注が低下し在庫が増加するなど、内訳はおおむね弱かった。仕入れ価格を示す指数は引き続き上昇しているが、上昇のペースは減速している。

今後の展開

FRB高官は、12月の雇用統計で平均時給の伸びが減速したことを歓迎しているかもしれない。賃金伸び率3.5%はFRBのインフレ目標2%に相当するほぼ上限であり、12月の平均時給の減速はこの水準に近づくものだ。

ただし、その他のデータは雇用市場のひっ迫を示唆しているため、賃金の伸び鈍化を示すさらなるデータを確認するまでは、FRBが利上げの停止を検討することはないだろう。

失業率は11月の3.6%から12月は3.5%に低下し、50年ぶりの低水準に並んだ。米労働省発表の11月のJOLT求人件数は前月比で5.4万人減の1,046万人となった。失業者1人につき1.74件の求人がある計算だ。注目すべきは離職率が高い点で、これは賃金の力強い上昇と関連している。アトランタ連銀の賃金追跡調査によると、転職者は約8%の賃金上昇を達成している。

投資家は、12月の非製造業ISMでサービス・セクターが2年半以上ぶりで好不況の節目となる50を割り込んだことも好感した。パンデミック下での下落を除くと2009年以来の低水準となった。このデータはFRBが懸念するサービス・セクターの物価上昇圧力が後退していることをも裏付け得るものだ。仕入れ価格は2021年1月以来の水準に低下し、サプライチェーンの目詰まりが解消しつつあることを示唆している。

投資見解

市場は引き続き変動の激しい状況が続くものと予想しており、マクロ情勢はまだ株式相場が持続的に上昇する状況にはないとみる。5日の株式相場は、堅調な雇用データと、FRBが金融政策を転換するには消費者物価指数の減速だけでは足りないとの市場の見解から下落していた。6日に発表された賃金の伸び減速はFRBの政策転換に向けた一歩ではあるが、単なる1データに過ぎない。

こうした中、我々は株式へのエクスポージャーを維持するが、ポートフォリオの防御機能を強化する戦略を勧める。株式の中ではヘルスケアや生活必需品などのディフェンシブ・セクター、および、情報技術セクター比率の高い米国株式よりもバリュー株比率の高い英国株式を勧める。債券では、高クオリティ債を推奨する一方、相対的にリスクの高い債券については慎重な姿勢をとる。

2023年はインフレ、金利、経済成長の転換点が訪れると予想する。今後これらの転換点が視野に入ってくれば、全体的にリスク志向を強めることを検討するのが適切だろう。

リスク許容度が高く、転換点に到達した時に最も力強く反発しそうな投資対象を探している投資家向けとしては、ドイツなど回復サイクルが始まったばかりの市場、株価が大幅に割安に落ち込んでいる「ディープ・バリュー」株、半導体セクターの一部、中国の経済活動再開の恩恵を受けそうな銘柄に投資機会があると考える。

通貨市場については、12月に米ドルを推奨から中立に引き下げた。米ドルはすでにピークを付けたと我々は判断している。

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本稿は、UBS AGが作成した“CIO Alert: Equities rally as rate hike concerns ease”(2023年1月6日付)を翻訳・編集した日本語版として2023年1月10日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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