House View Weekly

利上げ懸念が再浮上、相場上昇に一服

10月に始まった株式相場の反発が失速しつつあるようだ。米FRBが金融引き締めを継続するとの懸念が再浮上し、S&P500種株価指数は先週3.4%下落した。

今週の要点

利上げ懸念の再浮上で株式相場上昇に一服

10月に始まった株式相場の反発が失速しつつあるようだ。米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを継続するとの懸念が再浮上し、S&P500種株価指数は先週3.4%下落した。その大きなきっかけの1つとなったのが、全米供給管理協会(ISM)が発表した非製造業景況感指数が予想外に上昇し、FRBが景気抑制策を長引かせる必要性が示唆されたことだ。同指数は、経済活動の幅広い上昇に加えて、FRBが望む緩やかな賃金低下とは相反する強い労働市場環境を示した。

この指標は、12月2日に発表された11月の雇用統計で雇用の増加と平均時給の伸びが示されたことと整合する。

最近のこうした動向は、この相場の上昇が、FRBの掲げる2%の物価目標を非現実的なほど順調に回復することを織り込んだものだとの我々の見方を裏付ける。我々はなお12月14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅が0.5%に縮小されるとみている。ただし、FRBが最終的に、現在市場が織り込む5%のターミナルレート(金利の最終到達点)を超えて利上げせざるを得なくなるリスクは依然として残っている。

要点:インフレはピークからは鈍化しつつあるようだ。だが、特に労働市場の底堅さを示す兆候が続いていることから、順調には低下しないだろう。こうした背景から、引き続きディフェンシブ・セクターと、伝統的な資産との相関の低いヘッジファンド戦略の追加を推奨する。

中国経済回復の恩恵を受ける企業を模索する

中国国家衛生健康委員会は先週、ゼロコロナ政策のさまざまな追加緩和を発表した。これは中国が徐々に経済活動の再開に向かっていることを示す新たな兆候だ。同委員会は、「新たな10項目」の緩和として、高齢者向けワクチン接種の加速、集団隔離施設ではなく自宅隔離の容認、大半の公共施設で陰性証明書の提示を不要とすることなどを発表した。こうした緩和策のほか、不動産開発業者向け追加支援や、中国共産党政治局のより経済成長重視の方針も発表された。

我々は、全面的な経済活動の再開は一筋縄ではいかないとの見方を変えていない。若者が主体となって経済活動の再開を求める抗議活動を行っているが、新型コロナウイルスに対する世論の不安は強く、感染拡大で医療現場がひっ迫すればさらに不安が高まる可能性がある。全面的な経済活動の再開は、欧米製のワクチンに匹敵する効果を持つ中国国産mRNAワクチンが普及してからの方が容易だろう。

だが、経済活動再開に向けた素早い動きは、すでに一部に投資機会をもたらしている。医薬品および医療機器メーカーには、さらなる感染拡大の波に対応する医療施設からの調達増加の恩恵が期待される。旅行業界も、稼働率がコロナ前水準の2~3割程度にとどまる航空会社を含め、恩恵を受けるだろう。また移動制限の緩和は不動産需要を押し上げ、ひいては素材および資本財セクターにも追い風となるとみられる。

要点:医薬品および医療機器、消費財、インターネット、輸送、資本財、素材といった、中国経済の再開に向けた緩やかな転換が直接追い風になるセクターに注目する。債券については、不動産セクターの投資適格債に対して前向きな見方に転じるとともに、一部のハイイールド債に妙味があるとみている。

グローバル化の変容はセキュリティの新時代への移行を明確に示している

先週は、地政学的緊張が企業の投資や物資調達の決定に影響を及ぼしていることを示すさらなる兆候がみられた。世界最大手の半導体受託製造企業が米アリゾナ州の新工場建設のため投資額を従来計画の3倍超にあたる400億米ドルに拡大することを発表した。これは供給網の強靭化に向けた長期的な構造転換の動きを裏付けている。また、欧州連合(EU)がロシア産天然ガスへの依存度を低減していることがデータから確認できた。コモディティ調査会社ICISのデータによると、11月のEUの天然ガス消費量は過去5年の平均を24%下回った。

テクノロジーおよびエネルギーの供給網の急速なシフトは、安全保障の新時代への幅広い移行を示している。政府や企業が価格や効率性よりも供給網の安全を優先する時代だ。こうした動きにより、エネルギー、食料、サイバーセキュリティの分野で投資機会が生まれるとみている。

エネルギーについては、国内でのグリーン・エネルギー源の開発や、同盟国からの供給拡大への注力が高まっている。ウクライナ紛争や気候変動の脅威の高まりにより、農産物供給網の強靭化の必要性が浮き彫りとなった。また、サイバー脅威に対する政府および企業の投資が拡大するだろう。リモートワークの増加や国家・非国家からの脅威の増大に伴い、サイバーセキュリティへの注目は高まっている。テクノロジー分野の調査会社ガートナーによると、サイバーセキュリティへの支出は2023年に11.3%増の1,880億米ドルに達し、2024年も2桁増を予想している。

要点セキュリティの新時代は、今後10年のあらゆる投資環境で勝者と敗者を分ける主要因の1つとなるだろう。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2022年12月12日付)を一部翻訳・編集した日本語版として2022年12月14日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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