House View Weekly
米中間選挙、市場への影響はまちまち
米中間選挙の最終結果はまだ出ていない。しかし、共和党の圧勝を意味する「赤い波」は起きなかった。
2022.11.14
接戦の米中間選挙による市場への影響はまちまち
米中間選挙の最終結果はまだ出ていない。しかし、共和党の圧勝を意味する「赤い波」は起きなかった。むしろ、上院は民主党が多数派を維持し、下院は共和党が僅差で過半数の議席を獲得する見通しだ。
こうした接戦の市場への影響はプラス、マイナス同程度と考える。ねじれ議会ということになると、大規模な財政支出の可能性は低くなりそうだ。特に、バイデン大統領が「戦争により棚ぼた利益を得ている」と最近非難した石油・ガス企業に対する超過利潤税の導入の可能性は、当初より低かったが今やさらに低下した。
歴史的には、中間選挙の結果が判明すると、どのような結果であれ株式相場は上昇する傾向がみられた。1982年以降10回の中間選挙が行われているが、S&P 500種株価指数はいずれの中間選挙実施後も12カ月で上昇している。平均上昇率は13.5%程度だ。ただし、インフレ率の高止まり、積極的な利上げ、地政学的緊張の高まりなど様々な逆風が市場に吹き付けていることを勘案すると、今年はトレンド通りにはいかない可能性がある。
今回の選挙結果如何で決定的な政策転換が行われる可能性は低く、引き続き金融政策が市場を動かす主要要因となるだろう。利上げペースと到達点が依然、投資家の最大関心事だ。
要点:投資家には、政治見通しに左右されることなく、長期の投資計画に則り投資配分を行うことを勧める。石油・ガス企業への超過利潤税導入の可能性が大幅に後退したことは、原油高により上昇が見込まれるエネルギー・セクターにとってプラス材料である。
インフレ改善を受け株式相場が上昇
10日に発表された米消費者物価指数(CPI)が予想を下回り、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ積極姿勢緩和への期待感が再燃したことにより、同日のS&P500種株価指数は2020年4月以来の上げ幅となる5.5%上昇となった。S&P500種株価指数は先週5.9%上昇し、6月以来の上昇率を記録した。10月のCPIは前月比0.4%上昇し、エコノミストのコンセンサス予想である0.6%を下回った。変動の激しい食品とエネルギー価格を除くコアCPIは同+0.3% となり、8月と9月の同+0.6% から上昇ペースが半減した。
CPI低下を受け、これまで4回連続0.75%だった利上げ幅を次回12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%に引き下げられるとの市場の見方が強まった。また、先週は2023年6月に5.1%近辺と織り込まれていた最終金利も、約4.9%に低下している。CPI発表後、米2年国債利回りは25bp低下し、2008年以降で1日の下げ幅最大となった。
インフレ上昇ペースの減速は喜ばしいことだが、FRBがインフレ抑制の手を緩めるとは考えにくい。第1に、FRBは数カ月連続のインフレ減速を確認してから、ハト派姿勢への転換を検討するだろう。サービス価格の上昇は依然として懸念材料だ。コアサービス価格は過去数カ月からは低下しているが、0.5%増と依然気がかりな高さだ。第2に、FRBは労働市場鎮静化の兆候を確認する必要がある。10月の雇用統計は雇用の伸びが強く、失業率も50年ぶりの低水準をわずかに上回るなど、今のところ労働市場の鎮静化を確認できる内容ではなかった。
要点:FRBのハト派転換にはまだ時間がかかると考えており、投資家はボラティリティ(変動率)の上昇継続に備えておく必要があるだろう。こうした環境では一部のヘッジファンド戦略、特にマクロ戦略を推奨する。FRBのタカ派姿勢は米ドル高を下支えするとみられ、当面米ドル高を予想する。
引き締めの影響が経済と市場に顕在化しつつある
シカゴ連銀が算出する全米金融環境指数は、パンデミック初期の急騰を除いて世界金融危機以降で最も引き締まっており、金融機関の貸し出し態度や市場に与える影響が顕在化しつつある。
FRBが四半期ごとに実施する融資担当者調査では、商工融資の貸出基準を引き締めていると回答した銀行が39%に上った。銀行融資はもはや資金調達手段の大半を占めるものではないが、貸出基準動向はこれまで企業利益の先行指標となってきた。こうした金融引き締め傾向は昨年急速に強まっており、今後数四半期の間にS&P500構成企業の利益を一段と下押しすることを示唆している。
さらに金融引き締めは、ビットコインも含めたより投機的資産の新たな下落にもつながっているかもしれない。11月9日にビットコインは16%下落し、年初来(11月11日現在)の下落率は64%となった。仮想通貨業者が救済案決裂の後、チャプターイレブン(米連邦破産法11条)を申請し破綻したことを受け、暗号資産への信頼感は広範にわたり低下した。
要点:最近の動向は、今後3~6カ月はリスクに見合ったリターンは望みにくいとの我々の見方を裏付けている。だが、分散ポートフォリオの長期的なリターン見通しが明るいことを考え、上昇局面のリターンを捉えつつ下落局面でプロテクションとなる戦略を勧める。追加組み入れでは、ヘルスケアや生活必需品セクターに加え、高格付債や投資適格債など、株式・債券市場双方でディフェンシブな銘柄選択を推奨する。