House View Weekly
食料とエネルギー保障が再び焦点に
ロシアの黒海経由ウクライナ産穀物輸出協定離脱と数日後の復帰を受け、食料価格が大きく変動。ロシアの合意復帰で小麦価格は急反落、船荷主間の警戒感が高まる可能性。
2022.11.07
穀物輸出協定をめぐるロシアの駆け引きで食料とエネルギー保障が再び焦点に
ロシアの黒海経由ウクライナ産穀物輸出協定からの離脱と数日後の復帰を受け、食料価格が大きく変動した。ロシアの合意復帰により小麦価格は急反落したが、こうした混乱で船荷主間の警戒感が高まる可能性がある。11月19日の輸出協定期限を前に、この地域での輸送活動はすでに鈍化し始めている。
サプライチェーン問題が穀物とエネルギー価格を高止まりさせる可能性があるため、食料とエネルギー懸念が引き続き今後数カ月の焦点となるだろう。ラニーニャの季節到来で、南半球の主要生産地、特にアルゼンチンとオーストラリアでの収穫量減少の危険性が高まっている。よって我々は最近、小麦価格の見通しを引き上げた。
一方、EUによるロシア産原油の段階的輸入禁止に加えて、OPECプラス(石油輸出国機構に非加盟産油国を追加)が今月から日量200万バレルの減産を開始することから、年末に向け世界の原油供給量は一段と制約される見通しである。ブレント原油価格は、2023年3月から12月までの間に1バレル当たり110米ドルをつけると予想する。
要点:広い意味で、食料およびエネルギーの価格と供給の変動は、世界のサプライチェーンの堅ろうさに着目するセキュリティ時代の現れである。食料に関しては、こうした環境は農業収穫量増加ソリューションの提供企業に追い風となるだろう。より広範にみれば、サプライチェーンの安全性向上の潮流は、エネルギー安全保障、再生可能エネルギー、サイバーセキュリティ関連企業にも追い風となるだろう。
中国経済の再開は依然として遠いが必要不可欠
中国共産党大会の閉幕以降、中国経済に打撃となるゼロコロナ政策の見通しに指針が出されておらず、投資家を依然として不安にさせている。最近中国当局は、世界最大のiPhone生産工場周辺地域の60万人を対象にロックダウン(都市封鎖)を実施した。
新たなロックダウンとゼロコロナ政策の継続により、厳格なコロナ政策が(仮に終わるとすれば)その時期はいつかという懸念が高まった。不確実さが憶測を呼んでいる状況は、ゼロコロナ政策の出口戦略を検討する委員会が設立されたとの未確認情報に市場が大きく反応したことからもうかがえた。しかし週末には、「ゼロコロナ政策を一貫して継続する」との中国政府の言が繰り返された。
定義やその影響は様々だろうが、我々は、「意義ある」経済活動再開を、中国経済と日常生活に最大の打撃となっているロックダウンと国内移動制限の恒久的な撤廃と定義する。こうした撤廃の後ではじめて、全面的な国境往来が解禁されるとみられ、それまでの規制緩和は漸次的なものにとどまるだろう。
中国政府が2035年成長展望に盛り込んだ中長期の経済成長目標を達成しようとするならば、最終的にはこうしたプロセスが不可欠とみている。この目標に基づく最も可能性が高いシナリオは、中国開発のmRNAコロナワクチンの承認も含め安全懸念を鎮めるに十分な時間を経て、2023年7-9月期(第3四半期)のいずれかの時期にロックダウンを恒久的に撤廃するというものだ。
要点:ゼロコロナ政策の緩和は当面先であり、短期的に中国経済の回復には逆風が続く。総じて中国株式は中立を維持する。