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米政策金利のピーク上昇懸念で株価下落

2日のS&P500種株価指数は2.5%下落した。パウエルFRB議長がFOMC後の記者会見で、利上げ停止を検討するのは「かなり時期尚早」と述べたことが嫌気された。

何が起きたか?

2日のS&P500種株価指数は2.5%下落した。米連邦公開市場委員会(FOMC)で4会合連続となる0.75%の利上げを決定し、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を3.75~4%とした後の会見で、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が、利上げ停止を検討するのは「かなり時期尚早」と述べたことが嫌気された。

会見の中でパウエル議長は、インフレ抑制の手を緩めるのは「まだ相当先」であり、9月の前回FOMC以降の経済指標からは「金利の最終的な着地点が想定よりも高くなる」ことが示唆されると述べた。前回会合で、FOMC参加者による金利見通しの中央値は4.6%だった。市場は現在、金利のピークを2023年6月頃の5%超と予想している。

株式市場は当初、FOMCの声明文で利上げペースの減速の可能性が示唆されたことを好感したが、パウエル議長の会見後に急反落した。FOMCの声明文には、FRBはこれまでの「累積的な引き締め効果」と「金融政策が経済活動や物価に影響を及ぼすのには時差がある」点を考慮するとの文言が盛り込まれた。パウエル議長は早ければ12月のFOMCか「その次の会合」で、利上げペースを徐々に減速する可能性があると確認した。

FOMCの前日に発表された経済指標では、労働市場が依然としてひっ迫していることが確認された。米労働省が発表した9月のJOLT求人件数は8月の減少から増加に転じ、43万7,000人増加の1,072万件となった。市場では975万人の減少が予想されていたが、予想に反して大幅な増加となった。その結果、9月末時点で米国の失業者1人に対する求人数は1.9となり、賃金上昇が続くことが示された。

今後の展開

今回のFOMCの結果と最新のガイダンスは、金融政策のハト派転換を期待したポジション構築は時期尚早という我々の最近の見解と一致する。FRBの方針転換には、インフレ圧力の後退と労働市場の鎮静化を示す一貫した証拠が必要とFRB高官はたびたび指摘している。だがいずれの条件もいまのところ満たされていない。食品とエネルギーを除く9月のコア個人消費支出(PCE)デフレーターは、前月比0.5%と8月より上昇した。前年比では、8月の4.9%から5.1%へと上昇している。一方、9月の失業率は50年ぶりの水準となる3.5%に再び低下した。

足元の0.75%からの利上げ幅の縮小はあり得る。だが、それには、次回12月14日のFOMC会合までに、インフレと雇用指標が鈍化することが条件となるだろう。また、引き締めペースよりも最終的な金利水準(ターミナルレート)を市場が懸念するのはもっともだ。総じて、こうした状況が株式市場の持続的な上昇を後押しするとは見ていない。FRBやその他主要中銀は、2023年1-3月期(第1四半期)まで金融引き締めを継続するとみられ、経済成長率は来年初めまで引き続き減速するだろう。金融政策の引き締めが続く中で、世界の金融市場はストレス要因による影響を受けやすい。また、こうした逆風はまだ企業の利益予想や株式のバリュエーション(株価評価)に織り込まれていないと考える。来年の世界の企業の1株当たり利益(EPS)は、ボトムアップによるコンセンサス予想では5%の増加だが、我々は3%の低下と予想する。

投資見解

S&P500種株価指数は10月中旬の安値から一時9%上昇したが、こうした最近の相場上昇については慎重に構えることを勧める。ただし、定期的な相場反発はありうるため、株価の上昇を捉えるポジションを維持しながら、下方リスクのプロテクションを追加する戦略を推奨する。

今後3~6カ月はリスクに見合うリターン水準は期待できず、2日のFOMCの声明文はこうした見方を裏付ける。現在の環境下では以下の投資を推奨する。

ディフェンシブ資産のポジションを追加。株式では、元本確保戦略、バリュー株、高クオリティ高配当株を推奨する。セクター別では、グローバル・ヘルスケア、生活必需品、エネルギーを推奨する。グロース株、資本財、情報技術は非推奨とする。24日の週の巨大ハイテク企業決算は、こうした見方を裏付けるものとなった。地域別では、バリュー株比率が高く割安な英国とオーストラリアの株式市場を米国市場よりも推奨する。米国株式はテクノロジー株とグロース株比率が高くバリュエーションも割高だ。

債券では、米ハイイールド債より、高格付債と投資適格債を推奨する。通貨では、英ポンドとユーロより、安全通貨とされる米ドルとスイス・フランを推奨する。

ヘッジファンドを活用した分散投資。今年はこれまで、ヘッジファンドが稀に見る素晴らしい投資先となっており、とりわけマクロ戦略が好調だ。インフレ指標と中央銀行の金融政策から、短期的に株式と債券の相関が高い状況が続くと予想される。よって、こうした資産との相関が低いヘッジファンド戦略に分散することで、不確実な市場環境を切り抜けることを勧める。

プライベート市場への投資。今年は、一部のプライベート・マーケット・ファンドの純資産総額(NAV)が、株式市場の調整を受け下方修正する可能性がある。だが、歴史的には、株式相場下落局面ではプライベート市場への投資がリターン獲得の機会となり得る例がみられてきた。足元の環境では、バリュー指向型戦略がますます魅力を増してくるだろう。

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本稿は、UBS AGが作成した“CIO Alert: Stocks fall on threat of higher peak in Fed rates”(2022年11月2日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年11月4日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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