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米労働市場の逼迫変わらず株価下落

7 日のS&P500 種株価指数は2.8%下落し、週の上昇幅は1.5%に低下した。同日発表された雇用統計が米労働市場が依然ひっ迫している状況を示し、米連邦準備理事会(FRB)が引き続き積極的に金融政策を引き締める可能性が示唆された。

何が起きたか?

7日のS&P500種株価指数は2.8%下落し、週の上昇幅は1.5%に低下した。同日発表された雇用統計が米労働市場が依然ひっ迫している状況を示し、米連邦準備理事会(FRB)が引き続き積極的に金融政策を引き締める可能性が示唆された。9月の非農業部門雇用者数は26万3,000人増加し、失業率は3.5%とパンデミック前の水準へと再び低下し、50年ぶりの低水準となった。

米10年国債利回りは6ベーシスポイント(bp)上昇して3.88%となり、週全体では8bp上昇して引けた。7日は米ドル指数が0.4%上昇した。一方、週前半に、石油輸出国機構(OPEC)に非加盟産油国を加えたOPECプラスが、11月は実質的に日量100万~110万バレルの減産に踏み切ると発表したことを受け、ブレント原油が引き続き上昇し、4.3%高い1バレル当たり98.6米ドルとなった。

今後の展開

7日のS&P500種株価指数は下落して引けた。先週は、FRBの金融政策転換が想定より早いのではという投資家の楽観論が一進一退し、市場が乱高下した。

米国株式は週初2日間で5.7%上昇し、米10年国債利回りは24bp低下した。週初に発表された9月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数が前月から低下し、8月の米雇用動態調査(JOLT)で求人数が100万人以上減少したことから、景気減速とひっ迫した労働市場の緩和の兆しが確認された。これら経済指標は、FRBがじきにタカ派スタンスを転換するだろうとの期待を高めた。

しかし、FRB高官はこの見方を即座に一蹴した。シカゴ連銀のエバンズ総裁は6日、来春までに政策金利は4.5~4.75%に向けて上昇するだろうと述べ、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、FRBの利上げ停止は「かなり遠い先」と述べた。また経済活動の堅調さの継続を示す追加的な経済指標も発表され、金融政策の引き締め継続が示唆された。9月のISM非製造業景況感指数は、8月の56.9から56.7へとわずかに低下したが、予想の56を上回った。

7日に発表された雇用統計は、総じて労働市場のひっ迫が続くとの見方を強めた。だが一部指標には労働市場鎮静化の初期の兆候が見て取れる。9月の就業者数は前月比26万3,000人増と、増加ペースが2021年4月以来で最も鈍化した。また、9月の時間当たり平均賃金は10セントと緩やかな増加となった(8月は9セントの増加)。この賃金上昇ペースが続けば、FRBが目指す2%のインフレ目標に整合してくる。

だが、失業率の3.7%から3.5%への低下は、労働市場が依然としてひっ迫していることを示唆している。また、前月は上昇していた労働参加率が62.3%へとわずかに低下している。単月の経済指標を深読みしすぎないことが大切だが、労働市場に人が戻ってこないため人手不足に陥りつつある現れの可能性もある。

今後数カ月の間に各国中央銀行内で適切な利上げペースをめぐる議論が活発化する可能性があり、ここ数カ月投資家が対峙してきたようなボラティリティ(相場の変動)がより高い相場が続くと予想する。株価がより持続的に上昇するには、米国のインフレ率の明らかな下落基調に加えて労働市場が軟化し、FRBが利上げサイクルを停止できるとの証拠が必要だろう。

11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、再び75bpの利上げを予想する。10月13日に発表される9月の消費者物価指数(CPI)が今週の重要指標になるだろう。全米独立企業連盟(NFIB)の中小企業楽観指数も、求人数と賃金上昇に関する情報を提供する。

投資見解

今後数カ月、不確実性が高い状況が予想されるため、さまざまなシナリオにわたり耐性があるポートフォリオの構築を勧める。各資産では、生活必需品やヘルスケア関連銘柄、高格付債など、よりディフェンシブな分野を勧める。スイス・フランと米ドルは、明らかな利上げサイクルにおける伝統的な安全通貨として推奨する。

また、グローバル・バリュー株式と、今後数四半期予想される原油価格の上昇に支えられたエネルギー・セクターも推奨する。バリュー銘柄比率の高い英国株式市場も推奨する。MSCI ACワールド指数は今年の3四半期でグロース株を12ポイント上回って推移しており、インフレ率が依然として各国中央銀行の目標値をはるかに上回っている状況下、我々はこの傾向が続くとみている。

株式と債券はインフレと中央銀行の金融政策への見通しに左右される現状下、投資家には、これらと相関性の低いリターン源泉を追求することも勧める。例えば、ヘッジファンド(特に裁量的マクロ戦略やプライベート市場)を組み入れた分散投資である。


本稿は、UBS AGが作成した“CIO Alert: Equities fall as US labor market stays tight”(2022年10月9日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年10月11日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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