House View Weekly

中銀のインフレ抑制強化を受け株価下落

米連邦準備理事会(FRB)がタカ派姿勢をさらに強めるなか、S&P500種株価指数は先週5.8%下落し、パンデミック初期以来の弱気相場に突入した。

今週の要点

主要中銀のインフレ抑制強化を受け株価下落

米連邦準備理事会(FRB)がタカ派姿勢をさらに強めるなか、S&P500種株価指数は先週5.8%下落し、パンデミック初期以来の弱気相場に突入した。FRBは1994年以来の大幅利上げとなる75ベーシスポイント(bp)の政策金利の引き上げを決定し、7月の連邦公開市場委員会(FOMC)でも引き続き引き締めペースを加速する意向を示唆した。またスイス国立銀行が予想外に50bpの利上げに踏み切った。

また、イングランド銀行、ハンガリー国立銀行も相次いで利上げに踏み切った。これにより、インフレ上昇が各国中銀の最大の関心事であり、たとえ景気後退リスクが上昇しても金融引き締め政策を迅速に行う意向であるとの認識が高まった。

多くの主要中銀がタカ派姿勢を強めており、これが経済成長と株式市場の両方の重石となっている。米国では金融引き締めの影響が実態経済に波及しつつある。30年固定の住宅ローンの平均金利が週初の5.2%から週末には5.8%に急騰し、1987年以降で最大の上昇となった。前週発表された各種住宅関連指標と小売売上高は、経済活動の減速を示唆した。

こうした状況下、年内の株価の上昇余地は低下したと我々はみている。経済成長の減速は企業業績の重しとなり、債券利回りの上昇は株価バリュエーションにマイナスとなる。よって、我々の基本シナリオにおけるS&P500種株価指数の2022年12月末時点の見通しを3,900に引き下げた。

要点:さらなるボラティリティ(変動率)の上昇に備え、高クオリティ銘柄、高配当銘柄やヘルスケア・セクターなど、ディフェンシブ銘柄のポジション構築を推奨する。

ECBの声明文で債券価格の下落が一服

欧州中央銀行(ECB)は、一部のユーロ圏債券市場の急落を受けて臨時会合を開いた。会合後の声明文には、債券市場分断の再発リスクに対してECB が対応すると公約し、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)で購入した債券について「償還を迎えるものは柔軟に再投資をする」と明記された。

しかし、新たな対策はなんら発表されなかった。声明では、政策引き締めによる金融市場のリスクを注視することが示唆され、これを受けてイタリアとドイツの10年国債利回りの格差が縮小した。しかし我々は、最終的には新たな対応策の導入が必要であり、ユーロ圏周縁国債はスプレッドが拡大する可能性が高いと考える。

一方、ロシアがパイプラインのノルドストリームを経由してドイツに供給している天然ガスをここ数日でわずか4割にまで削減したとの報道から、ユーロ圏の景気リスクも高まった。ロシア国営ガス会社はこの削減の理由を技術的な問題としているが、ドイツ政府はエネルギー削減の判断は政治的なものと述べている。この供給削減により欧州最大の経済国であるドイツの景気後退リスクが高まっており、5月に前年同月比で7.9%上昇した消費者物価指数(CPI)を抑制することがますます難しくなっている。

景気減速と引き締め加速を踏まえ、我々は基本シナリオにおける年末のユーロストックス50指数の目標水準を15%引き下げ、3,400ポイントとした(17日時点の同指数は3,438ポイント)。

要点:ディフェンシブ・セクターや、高インフレ時に通常アウトパフォームするバリュー・セクターに注目することを推奨する。

景気減速懸念が高まるも原油価格は下支えされよう

原油価格が17日に急落し、先週は北海ブレント原油価格が7.3%、WTI原油価格が9%下落した。これは景気後退懸念と米ドル指数の上昇が原因になったと考える。石油は、米ドルの上昇により他通貨を使用する買い手にとって割高となる。

しかし、原油価格は直近で下落したが、年内は底堅く下支えされると考える。

まず需要面では、世界最大の石油輸入国である中国の需要が今後徐々に回復するとみている。投資家は直近の上海での大規模PCR検査実施(その間、住民は屋内待機を命じられた)など、中国のゼロコロナ政策に神経を尖らせているが、同国の経済再開は想定通り進捗するとみられる。さらに、欧米で長期の夏季休暇シーズンが始まると世界のガソリン需要が一段と拡大すると、国際エネルギー機関(IEA)が予想している。

供給面では、原油の供給ひっ迫が続く見通しである。産油国連合OPECプラスは段階的な増産を表明しているが、現行の生産目標の達成ですら苦戦していることから供給の大幅増は見込みにくい。また、欧州連合(EU)のロシア産原油の輸入禁止も(一部調整は続いているものの)長期的な需給不均衡をさらに悪化させることになるであろう。

要点我々は北海ブレント原油価格の予想水準を直近で引き上げた。9月末は130米ドル/バレル、その後3・四半期は各々125米ドル/バレルを見込む。エネルギー株と資源国通貨も引き続き魅力度が高いと考える。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2022年6月20日付)を一部翻訳・編集した日本語版として2022年6月21日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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