ドル円

日銀の政策転換には時間を要する

目先、ドル円は米国の金利上昇と原油高に引き続き下支えされるだろう。中長期的にはドル安・円高基調の見通しを維持する。

  • ドル円の見通しについて、2022年9月を133円(従前予想:126円)、12月を130円(同124円)、2023年3月を127円(同122円)、6月を124円(同120円)に変更する。
  • 目先、ドル円は米国の金利上昇と原油高に引き続き下支えされるだろう。日銀は今月、超金融緩和策を維持する方針を決めた。ただし、円の動向は十分に注視する必要があると言及した。
  • 中長期的には、日銀の緩和政策微調整やFRBの利下げ着手も視野に入るため、ドル安円高基調の見通しを維持する。

日銀は金融緩和策を継続し、円の動向を注視する

ドル円の見通しについて、2022年9月を133円(従前予想:126円)、12月を130円(同124円)、2023年3月を127円(同122円)、6月を124円(同120円)に変更する。この見通し変更は、我々の米国債利回り予想を大幅に引き上げた結果である。6月10日に発表された5月の米国消費者物価指数(CPI)の上昇が予想外に加速したため、米国債利回りが跳ね上がり、10年国債利回りは現在3.25~3.5%のレンジで推移している。これを受けて、我々の今年12月末の米10年国債利回り見通しも、従前の2.75%から3.25%に大幅に引き上げた。一方、日銀は日本10年国債利回りの許容変動幅の上限を0.25%に据え置いており、ドル円相場は米国の利回り上昇の影響を色濃く受ける展開となっている。さらに、日本は原油の純輸入国であることから、原油価格の長期的上昇も円安要因となっている。我々はブレント原油の9月末の予想水準を1バレル=130米ドル、その後の3・四半期末については同125米ドルへと引き上げた(従前予想はいずれも1バレル115米ドル)。

中長期的には、複数の理由から、ドル円相場はドル安・円高基調をたどるとの見方を維持する。まず、米国の景気減速リスクがドルの下押し圧力になりつつある。FRBが6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で75ベーシスポイント(bp)の大幅利上げを決定したにもかかわらず、米国経済指標の下振れを受けて最近はドル安に振れている。2023年後半以降については、米国の経済成長率とインフレ率の鈍化に伴いFRBは利下げモードに切り替えると我々は予想しており、9月を皮切りに12月までの3会合で利下げを実施すると見込んでいる。第2に、日銀は今後数四半期の間に金融政策の正常化の方向に動き出すと予想する。日銀は17日に当面の金融政策運営について公表し、その中で日本の景気とインフレ率の先行きについて回復が見込まれるとの見方を強調している。今回の発表で、日銀がここから年末に向けて、これまでの超金融緩和政策を微調整する下地が整ったとも考えられる。

投資判断

見通し:ドル円の短期的な見通しをドル高方向に引き上げたが、中長期的にはドル下落基調をたどるとの見方を維持する。

リスク要因:米国債利回りがさらに上昇すれば、ドル円は135~140円のレンジに上昇する可能性も考えられる。


本稿はUBS AG Singapore BranchおよびUBS Switzerland AGが作成した“USDJPY: More time needed for BoJ pivot”(2022年6月17日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年6月20日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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