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日本経済の正常化に備える:経済の再開が本格化

日本経済の再開がついに本格化しつつある。過去2年間蓄積された累積需要により需要の回復も力強い。外国人旅行者の受け入れ開始は来年にかけて追加的な呼び水となろう。

  • 日本経済の再開がついに本格化しつつある。過去2年間蓄積された累積需要により需要の回復も力強い。外国人旅行者の受け入れ開始は来年にかけて追加的な呼び水となろう。
  • 3月下旬に新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置が全面解除されたのに続き、政府は6月10日から外国人旅行者の受け入れを再開することを決定した。
  • 航空、鉄道、ホテルなどのほか、一部の小売および化粧品関連銘柄に投資機会があるとみる。

我々の見解

新型コロナ禍の影響を受けてきた日本経済は、2021年のワクチン接種の普及の遅れや2022年年初のオミクロン変異株の感染拡大などにより、再開が遅れてきた。一方、米国、英国などの国々は出入国制限を解除しつつあり、国内外への往来需要を累積してきた人々の往来が活発化している。

コロナ前の日本は年間3,000万人(1日当たり8.2万人超)の外国人旅行者が訪れていたが、コロナ禍を受け、日本政府は今年5月半ばまでビジネス出張目的を除く訪日外国人旅行者の受け入れを停止していた。5月下旬、岸田総理大臣はビジネス出張目的以外を含む外国人旅行者の受け入れを再開することを発表した。訪日旅行者数の回復は続く見通しだ。ただし、コロナ前に訪日旅行者の3割を占めていた中国人旅行者が、中国国内での移動制限を受けすぐに回復する見通しは薄いため、回復のペースはこれまでに予想されていたよりも緩慢となるだろう。だが、我々は以下に挙げる3つの理由から、日本経済の再開が進展し、今後3~6カ月間の投資テーマを後押しすると考える。

1つ目は、旅行への需要が積み上がっていることだ。国内旅行需要はすでに急回復を示している(図表1参照)。新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置は今年3月で全面解除されており、これから夏休みシーズンに向けて国内旅行需要の回復が加速するものとみる。また、入国制限がさらに緩和されれば、訪日外国人旅行者数は増加するだろう。6月4日から、訪日外国人旅行者受け入れ数がこれまでの倍に当たる1日当たり2万人に引き上げられた。他の国々が受け入れを拡大する中、日本でも入国制限は今後さらに緩和されるだろう(図表2参照)。幸い、日本はいまだ外国人観光客の旅行先としての人気が高い。

世界経済フォーラム発表の2021年の旅行観光競争力ランキングで、2位の米国、3位のスペインを抑え、日本が初の世界首位を獲得した(図表3参照)。円安も訪日旅行者の呼び水となることが期待される。

また、まん延防止措置が撤廃されたことで、出勤や、人に会ったり、買い物などの外出の機会が増えることから、化粧品の需要も増大するものとみる。主として中国事業の鈍化により株価が低迷している化粧品銘柄も、日本や中国など世界的な経済再開の恩恵を長期的に受けることが期待される。

2つ目に、パンデミック下で多くの企業にコスト構造の変化が生じたことが挙げられる。資産の減価償却を急ぎ、余剰生産能力が閉鎖・削減されるなどした。そのため固定費用は減少しており、エネルギー価格が上昇するなかにおいても、売上高が損益分岐点を超えて向上すれば、増益に直結するものとみる。

3つ目に、7月の参議院選挙を控え、新型コロナの影響を大きく受けた産業に対する政府の支援策が強化されるとの見方だ。岸田政権は国内の旅行及び飲食業向け支援策を導入するものとみる。円安の影響で食品・エネルギー価格が上昇するなか、就業者数の割合が最も高いサービス業の賃金引き上げを推進する可能性が高い。

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本稿は、UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社が作成した“Japanese equities: Be ready for Japan’s normalization: Japan’s reopening is underway”(2022年6月8日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年6月8日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
居林 通

UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社
チーフ・インベストメント・オフィスジャパン・エクイティリサーチ・ヘッド

居林 通

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2006年9月にUBS証券株式会社にアナリストとして入社。以来、日本の株式、経済動向を分析し、国内・海外に発信している(UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社の営業開始に伴い2021年8月に同社に移籍)。以前は1992年から2003年まで国内大手投資信託にてアジア株および日本株のファンドマネージャーを経験、その後2003年から2006年までヘッジファンドにて日本株の運用などに携わった。
日経CNBCなどにコメンテーターとして出演する傍ら、日経ビジネス、日経新聞、ロイターなどの各種メディアでも解説記事、インタビューなどを通してUBSの投資見解を提供している。現在の連載は週刊ダイヤモンド「株式市場 透視眼鏡」、日経ビジネスオンライン「市場は晴れ時々台風」。2001年エモリー大学ゴイズエタビジネススクール(米国アトランタ)にてMBA取得。

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