House View Weekly

インフレ高進でECBのタカ派姿勢に拍車

ユーロ圏のインフレ率は再び過去最高を更新した。物価上昇圧力のすそ野が広がるなか、欧州中央銀行(ECB)はタカ派姿勢を強めている。

インフレ高進を受け、ECBのタカ派センチメントに拍車がかかる

ユーロ圏のインフレ率は、4月の前年同期比7.4%から5月は同8.1%に上昇し、再び過去最高を更新した。食品とエネルギーを除いたコア消費者物価指数(CPI)も3.8%と記録的な水準に上昇した。

物価上昇圧力のすそ野が広がるなか、欧州中央銀行(ECB)はタカ派姿勢を強めている。このCPIの発表前、ラガルドECB総裁は9月末までに中銀預金金利をゼロか「それをやや上回る」程度に引き上げる可能性があると述べていた。だがCPIの発表後は、7月のECB会合での50ベーシスポイント(bp)の利上げの可能性をめぐる議論に変わった。

ECBがマイナス金利政策を終了するとの決定が揺らぐことは、短期的にはほぼないと思われる。ECBは今年、7月、9月、12月の3会合で25bpの利上げを行った後、来年は四半期に1度程度の利上げにより預金金利を1.25%にすると予想する。これは中立金利に近く、失業率が低下し、インフレ率が2%目標に向かって収斂する中で経済は引き続き拡大している環境と整合的な水準である。

要点:インフレが比較的高い水準で推移すると見られるため、株式の中ではグロース株よりもバリュー株を推奨する。インフラ、不動産、プライベート市場などのオルタナティブ資産もポートフォリオのインフレ耐性を高めるだろう。

原油高は長く続く見通し

先週は、産油国連合「OPECプラス」が市場予想を上回る増産幅の拡大を決定しながらも、原油価格は高止まりした。OPECプラスは、7月と8月の増産幅を従来の約40万バレルからそれぞれ日量約65万バレルに拡大すると発表した。

だが追加増産を決定しても北海ブレント原油価格は上昇し、120米ドル/バレルで週を終えた。年初以降の原油価格の上昇率は約50%に上る。市場の反応は、原油価格は高止まりするという我々の見方に沿ったものだ。

多くのOPECプラス産油国は生産能力が上限に達していることから、計画通りに増産が行われる可能性は低く、また余剰生産能力は今後も縮小する見通しである。そのため、市場に放出される追加原油の規模は小さいとみている。

さらに、今後6~8カ月にわたり段階的に行われる欧州連合(EU)のロシア産原油の禁輸措置により、世界の原油需給の構造的な不均衡は悪化するであろう。短期的には、中国の経済再開と北半球の夏季休暇入りがプラス材料となり、原油価格は下支えられるであろう。中国では、上海の厳格な都市封鎖措置が6月以降段階的に緩和され、年後半は経済再開とともに原油需要が回復すると見込まれる。一方、国際エネルギー機関(IEA)は、欧米で夏季休暇が始まるとガソリン需要が拡大すると警告した。

要点:北海ブレント原油価格は2023年6月まで115米ドル/バレルの水準で推移すると予想する。リスク許容度の高い投資家には、ブレント原油先物の期先物ポジションの保有を引き続き推奨する。またエネルギー株の魅力度も引き続き高いと考える。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2022年6月6日付)を一部翻訳・編集した日本語版として2022年6月7日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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