通貨市場
景気減速懸念が主要な変動要因
米国国債の利回り上昇および世界経済の減速懸念から、ここ数週間は米ドル全面高の展開となっている。
2022.04.27
- 米国国債の利回り上昇および世界経済の減速懸念から、ここ数週間は米ドル全面高の展開となっている。投資家には米ドル高を想定したポジションを維持することを勧める。
- 世界経済(特に中国経済)の減速と米国の実質金利上昇の見通しは、景気の影響を受けやすい通貨および低金利国通貨の下落要因となるだろう。
- 一段の米ドル高見通しを踏まえ、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルなど主要為替レートの修正を行った。資源国通貨については、一時的に下落する可能性はあるものの、強気見通しは変わらない。
我々の見解
足元、米ドルは他通貨に対して強含み、米ドル指数は4月月初以降3.0~4.0%上昇している。4-6月期(第2四半期)に入ると、オミクロン株の感染拡大を受けたゼロコロナ政策の強化を主因に、中国のGDP成長率予想が引き下げられた。これに伴い世界の資源国通貨が反落し、第1四半期の上昇幅を一部縮めた。中国人民元にもその影響が及び、米ドル/人民元は6.55の水準を上抜けた(米ドル上昇・人民元下落)。4月は安全通貨も振るわなかった。特に日本円は、日銀が金融緩和姿勢を維持したことなどから、大きく売られた。
米連邦準備理事会(FRB)はインフレ抑制へ断固とした対応をとる必要があり、また世界経済の減速懸念も高まっていることから、第2四半期は米ドルほぼ全面高の状況が続くものと予想される。このため、投資家は当面、米ドル高を想定したポジションを維持することを勧める。しかしながら、年後半にも米ドル高基調が続くかは不透明である。年後半の相場展開については、第3四半期に世界経済が前期比で回復するかどうかが鍵となるだろう。
我々は、世界経済成長が年後半に加速し、コモディティ価格は引き続き堅調に推移すると予想している。よって、特に米ドル以外のクロス通貨で資源国通貨(豪ドル、ノルウェー・クローネ、カナダ・ドル)が上昇すると見込む。
景気減速懸念が通貨市場の主要な変動要因
通貨市場は過去12カ月の間、主に3つの要因により揺れ動いた。主要国の金融政策正常化の動き、コモディティ価格(特にエネルギー価格)の上昇、そして景気減速への懸念である。
1つ目の金融政策の正常化は、FRBがスタンスを引き締め方向にシフトし始めた2021年年央以降、米ドル高要因として作用してきた。米ドルに対して下落している英ポンドでさえ、イングランド銀行(英中銀)のタカ派姿勢により、貿易加重平均でみた実効為替レートは最近まで持ち堪えていた。2つ目のコモディティ価格の上昇は最近になって通貨市場への影響を強め、豪ドル、ノルウェー・クローネ、カナダ・ドル、ブラジル・レアル、インドネシア・ルピアなどの資源国通貨が年初以降、貿易加重平均ベースで上昇している。資源国通貨は第1四半期は米ドルに対しても底堅く推移した。だが、4月上旬以降は景気減速懸念の影響が優勢となり、資源国通貨でさえ反落し始めている。
2022年の世界経済成長率のコンセンサス予想は、3月上旬の4.3%から直近3.5%まで急激に低下した。下方修正された同予想値は我々の見通しとほぼ一致している。当面の景気回復について慎重な見方が強まっている背景には、複数の理由がある。第1に、オミクロン変異株の感染拡大とゼロコロナ政策により、第2四半期の中国経済に減速懸念が広がっている。第2に、FRBの利上げ強化観測により、米国10年国債の利回りが3%近くまで上昇した(訳注:5月2日に3%台に上昇)。米住宅ローン30年固定金利も5.4%と10年ぶりの高水準まで急上昇している。第3に、供給不足によるコモディティ価格、特にエネルギー価格の高騰が欧州経済への下押しリスクとなっている。これらの問題は第3四半期までは解消の見込みが低いことから、今後数カ月は景気減速懸念およびリスク・センチメントの変化が通貨市場に大きな影響を及ぼす可能性がある。