マンスリーレター3月号
試される時
米国の著名な作家スコット・フィッツジェラルドはかつて「優れた知性とは、2つの相反する考え方を同時に受け入れながらも、それぞれの機能を発揮させる能力があるかどうかで判定できる」と述べた。
2022.02.24
米国の著名な作家スコット・フィッツジェラルドはかつて「優れた知性とは、2つの相反する考え方を同時に受け入れながらも、それぞれの機能を発揮させる能力があるかどうかで判定できる」と述べた。フィッツジェラルドならば、優れたポートフォリオであるかを試す判定基準にも同じことを言うかもしれない。
2022年に入って以降、投資家はいくつもの逆風に直面してきた。インフレ率は上昇を続け、物価上昇圧力は広がりを見せている。米連邦準備理事会(FRB)は、政策の重点目標を景気回復から物価の安定へと移した。イールドカーブのフラット化は、投資家の景気後退懸念を喚起した。そしてここに来て、ロシアがウクライナ侵攻を始めている。
以上を踏まえると、株式の保有比率を削減すべきだとの見方に分があるように見える。しかも最近の債券価格の急落で、債券投資の魅力が高まっている。
だが同時に、経済成長率は過去のトレンドを現在も上回っており、新型コロナウイルスによる行動制限措置の解除に向けて動いている国も多い。サプライチェーンの混乱は改善の兆しが見え始めている。したがって、米国のインフレ率はピークに近づいている可能性が高い。中国は景気刺激策を追加し始めた。金融環境は依然として緩和的な水準にあり、市場は、米国の政策金利は2%前後で頭打ちになると予想している。これはインフレ率上昇を抑えるために政策金利を20%まで引き上げた「ボルカー・ショック」とは比べものにならないほどの低水準だ。一方、今のところロシアによる原油と天然ガスの供給は今回のウクライナ危機による影響をほとんど受けていない。
株式市場もこれらのリスクを無視しているわけではなく、現時点では、25ベーシスポイント(bp)の利上げが今後2年間で7~8回実施されると想定した動きとなっている。グローバル株式の株価収益率(PER)は過去2カ月で9%低下し、全米個人投資家協会(AAII)の月次調査では、投資家のセンチメントが2016年以来の最低水準に近づいている。
相場の上振れ・下振れリスクはともに拡大し、中央銀行の政策転換が始まり、地政学上の混迷が深まる現在、我々は堅固なポートフォリオをどう構築し続ければよいのだろう。
最高投資責任者
UBS Global Wealth Management
Mark Haefele
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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。
ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。