通貨市場
「利上げ」の冷水に飛び込むか、ためらうか
直近の市場動向と中央銀行のコミュニケーション等を考慮して、従来予想を一部修正した。また2023年3月の予想を新たに追加した。
2022.02.24
- 通貨市場は概ね安定的に推移し、米ドルは年初から総じて強含んでいる。比較的安定を維持している通貨市場の動きは、上昇傾向にある金利と下落傾向にある株式とは対照的である。
- 通貨市場に明確なトレンドが存在しない状況は長くは続かないとみられる。目下のところ、我々は米ドル高を想定したポジションを取っている。また、米ドルを介さないクロス通貨取引では、利上げ国通貨および資源国通貨へのエクスポージャーを高めつつある。
- 直近の市場動向と中央銀行のコミュニケーション等を考慮して、従来予想を一部修正した。また2022年3月の予想に代わり、2023年3月の予想を新たに追加している。
今月、我々は2023年3月の予想を発表し、この機に全体的な見通しを見直した。短期予想の根拠として考慮したのは、金融政策引き締めの相対的スピードと、各中央銀行の政策へのコミットメントである。過去の利上げに注目すると、殆どの場合で連続して利上げが行われていたことが分かる。ごく稀に米連邦準備理事会(FRB)などが利上げを1、2回で終わらせたケースがある程度である。今回の利上げサイクルは、金利が超低水準に低下し、大幅な資産購入が行われた後に実施されることから、かなり大規模なものになると思われる。各中央銀行の金融引き締めは、ひとたび利上げに踏み切ると、その後は数四半期にわたってほぼ自動操縦モードになることが想定される。
前のめりのFRBに対して、ECBは慎重姿勢
最初の利上げ以降は、経済成長やインフレの指標にあまり振り回されず、長期にわたり引き締めサイクルが継続される。これに対し、最初の利上げの前は、高いインフレ率は重要な要素となる。高物価水準が利上げに踏み切る引き金となるからだ。英国、ノルウェー、ニュージーランド、その他一部新興国の中央銀行は、インフレ加速を背景に既に利上げを開始しているが、いまのところ金融市場に過度な打撃は及んでいない。一度決定を下したならば、よほど異常な指標が現れない限り、金利正常化に向けた動きを止めることはないだろう。一方、より慎重な姿勢を取り、冷たい水につま先だけをつけて、飛び込むことをためらっている中央銀行もある。
欧州中央銀行(ECB)は利上げに慎重な姿勢を取り、スイス国立銀行(中央銀行、SNB)はECBが飛び込んでからようやく水に入ることを検討すると思われる。日銀は、何らかの対応を取るとしても、主要中央銀行の中では最後となる可能性が極めて高い。