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ウクライナ侵攻と対ロ制裁で市場は乱高下

先週は各国市場でボラティリティが高まった。ロシアのウクライナ侵攻の影響、コモディティ供給途絶のおそれ、西側諸国の対ロ追加制裁を投資家が見極めようとしたからだ。

何が起きたか?

先週(21日週)は各国市場でボラティリティ(変動率)が高まった。ロシアのウクライナ侵攻の影響、コモディティ供給途絶のおそれ、西側諸国によるロシアへの追加制裁を投資家が見極めようとしたからだ。

ロシアがウクライナに侵攻した24日は市場のリスクオフ・ムードが高まったが、翌25日になると、ロシアからのコモディティ輸出を中断するような経済制裁は行われないとの楽観ムードが一部で高まり、相場は反騰した。空売りの買い戻しも上昇に寄与した模様であり、25日はS&P500種株価指数が2.2%上昇し、週間では0.8%の上昇となった。

先週はブレント原油価格も日中に激しい動きとなった。24日に一時8%上昇して1バレル当たり105.7米ドルと2014年以来の高値をつけた後、週末は97.93米ドルに下落して引けた。

25日は安全資産も反落した。米国10年国債利回りは24日の1.85%から上昇し(価格は下落)、ウクライナ侵攻前につけた1.97%で終了した。

週末に何が起きたか?

様々な報道から情報が錯綜しており、実際の状況は不透明である。ロシア軍がウクライナ北東部の第2の都市ハリコフに侵攻したとの報道が流れる一方、キエフ市当局は、首都キエフは引き続きウクライナ政府軍の支配下にあると述べた。

27日にはプーチン大統領が核抑止力部隊に対して、厳戒態勢に移行するよう命じた。

米国および西側諸国は、より厳しい制裁を発表した。これには、対ロ制裁を弱体化させないようロシア中央銀行の外貨準備利用を阻む施策や、ロシアの大手金融機関を世界的な決済システムである国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除する措置が含まれる。

今回のウクライナ危機により一部の石油パイプラインや小麦の供給に影響が生じているが、これまでに繰り出された制裁および懲罰では、ロシアは概して世界市場に引き続きコモディティを輸出できる。ロシア国営天然ガス企業は27日、ガス供給を通常通り継続していると述べた。

次に何が起きるか?

グローバル市場にとって引き続き重要な問題は、ウクライナ紛争がコモディティ市場に与える影響である。今のところ、すでにインフレ率が数十年ぶりの水準に上昇していることから、西側諸国はエネルギー供給の途絶を回避したい姿勢を示している。

同時に、ロシア側にとっても、世界の資本市場から締め出され外貨準備の利用が制限されることから、コモディティ輸出は外貨獲得の手段として重要性が高まっている。

いまのところ西側諸国は、ロシアのコモディティ輸出を制裁対象から除外している。だが、情勢は刻々と変化しており、西側諸国は数日前ならば考えられないような対策をすでに打ち始めている。米国政府はエネルギー制裁の可能性も否定していない。

ロシアでは、一連の制裁強化の影響が徐々に顕在化している。大規模な銀行の取り付け騒ぎや、企業や銀行による対外債務の返済能力やその意思についての懸念が浮上している。

ロシア中央銀行は、西側諸国の制裁により外貨準備の大部分が凍結される見込みだが、市場へのルーブル供給は継続することを公約した。

投資見解

ロシアの侵攻を受けているウクライナでは人道的危機が懸念されている。投資家には、事態の展開を受けて性急にポジションを動かさないよう慎重な対応を勧める。冷静な姿勢と状況を俯瞰する視点を維持することが重要と考える。

ポートフォリオを守る上でいくつか有効と考えられる投資行動をを以下に示す。

分散ポートフォリオを維持する。 地域、セクター、資産クラスにわたり分散することで、ウクライナ危機に固有のリスクやその他世界各国の政治リスクに対するエクスポージャーを低減できる。

コモディティを地政学リスクのヘッジ手段とする。 コモディティ供給の停滞リスクが高まる中、幅広いコモディティがポートフォリオの「地政学的ヘッジ」として機能し、さらにまた経済成長が加速し、インフレが長期化し、金利が上昇する環境でも魅力的なリターンを生むと考える。資産クラスの1つとして、引き続きコモディティにロングポジションをとることを勧める。価格が上昇したため、期待リターンは縮小したが、様々なリスク要因に対するヘッジ機能が期待できることから、ポートフォリオに組み入れる価値があると考える。

米ドル高に備えたポジションをとる。 米ドルは、地政学的な不確実性や金融市場で「リスクオフ」の地合いが高まる局面で買われることが多い「安全」通貨と認識されている。また、年内6~7回の利上げ見込みが、今後数カ月は米ドルを下支えするものとみられる。よって、米ドルは現時点で戦術的に魅力的な通貨ポジションだとみている。

防御を強化する。 不確実な状況が続く見通しの中、ポートフォリオのボラティリティを抑えたい投資家は、景気敏感株にディフェンシブなセクターや戦略を組み合わせることが有効な手段として検討できる。グローバル・ヘルスケアは引き続き推奨するディフェンシブセクターである。また、ポートフォリオ全体のリスク調整後リターンを改善する魅力的な手段として、配当戦略、ダイナミック・アセットアロケーション戦略等にも注目している。

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本稿は、UBS AGが作成した“Markets whipsaw amid Ukraine conflict and sanctions uncertainty”(2022年2月27日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年2月28日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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