House View Weekly
大局的に市場をとらえる
グローバル株式市場は先週、週間では2021年初め以来となる大幅な下げを記録した。しかし、足元の市場の動きについては大局的にとらえることが必要だ。
2022.01.24
今週の要点
市場の下落を大局的にみる
グローバル株式市場は先週、週間では2021年初め以来となる大幅な下げを記録した。米連邦準備理事会(FRB)の金融政策引き締め加速への警戒感、ロシアとウクライナの緊張、米国の一部注目企業の冴えない決算などが背景にある。MSCIオールカントリー・ワールド指数、S&P500種株価指数、ナスダック総合指数は先週それぞれ4.3%、5.7%、7.5%下落した。依然物価の高止まりが続く現況下では中央銀行の支援は必ずしも期待できないことから、市場が神経質となるのも理解できる。しかし、足元の市場の動きについては大局的にとらえることが必要だ。第1に、経済、企業ともにファンダメンタルズ(基礎的条件)は堅調だ。一部には低調な企業もあるが、現在までに発表された米国企業の決算は良好で、第4四半期(10‐12月期)企業利益は平均して予想を5%上回っている。第2に、こうした急落は珍しいことではない。過去を振り返ってみると、S&P500種は平均して1年に2回、5%以上の急落を経験しているが、必ずしもそれが上昇基調の終焉につながっているわけではない。実際のところ、そうした市場の調整が投機的な動きを弱める一助となることもある。足元では変動の激しい市場展開となっているが、FRBのタカ派姿勢への転換が投資家に消化され、新型コロナの変異株の感染拡大が沈静化すれば、市場のボラティリティ(価格の変動幅)も低下するだろう。
要点:株式市場については強気の見通しを維持しており、2022年末時点のS&P500種株価指数の見通しを5,100に据え置いている。ただし、その一方で、利上げの影響を受けにくいセクター、例えば債券ではシニア・ローンなども検討することを勧める。株式市場では、景気敏感セクターへのエクスポージャーに対し、ヘルスケアなどのディフェンシブ・セクターでバランスをとることを推奨する。
中国株式市場は政策の追い風の恩恵を受けるだろう
中国では、直近のGDP(国内総生産)および小売売上高データにより景気の減速感が強まる中、中国人民銀行(中央銀行)が2020年の春以来となる利下げを行った。これによって、昨年主要市場の中で最下位だった中国株式市場の流れが一気に変わる可能性は低いと考える。しかし、転換点は近いとみている。1-3月期はコロナ規制による向い風や不動産セクターの資金繰り問題などにより厳しい結果が予想されるものの、その後は景気回復が進むと見込む。金融、財政両面による一段の政策支援が打ち出される可能性が高いとみている。今年は、預金準備率の1~2回の追加引き下げによる銀行の融資促進と、中期貸出ファシリティの5~10ベーシスポイントの追加利下げが行われると予想する。これに加えて、追加減税、地方政府債発行の加速、スマートインフラ投資の拡大など、積極的な財政出動が見込まれる。
要点:中国株式市場の2022年のリターンは、政策の追い風と企業の堅調な利益成長率により、10%台中盤を予想する。耐久消費財・サービス、インテリジェント・インフラストラクチャーとサイバーセキュリティ、風力発電企業や電気自動車(EV)バッテリー・サプライチェーン、ニューエコノミー企業を中長期的に推奨する。
米ドルの反落は長くは続かないだろう
米ドルは軟調な2022年のスタートを切った。年初以降足元までの下落率は0.3%に留まっている一方で、米連邦準備理事会(FRB)がタカ派姿勢を一段と強めているわりに、米ドルへの押し上げ力には欠ける。米ドル指数(DXY)は2021年11月のピークから足元まで1.2%下落している。しかし、下落局面は短期に終わるとみている。最近の米ドルの軟化は、投機色の強い市場参加者の過剰に積み上がった買い持ちポジションも影響していると考える。こうしたポジションが解消されれば、米ドルはファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)をより反映するようになるとみている。特に、FRBは欧州中央銀行(ECB)、スイス国立銀行(中央銀行)、日銀に大きく先駆けて利上げを行おうとしている。米国では、12月の消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率が1982年以来の高水準となったことから、FRBは早ければ3月にも利上げに着手するという見方が強まった。一方、他の主要中央銀行は依然として超緩和的な姿勢を維持している。例えば、先週発表された日本の12月のコアCPIは、前年同月比上昇率が+0.5%となった。約2年ぶりの上げ幅ではあるが、依然として日銀の物価目標2%を大きく下回っている。
要点:米ドルの上昇、特にユーロ、スイス・フラン、日本円に対する上昇に備えたポジションを引き続き推奨する。主要中央銀行間の金融政策の乖離拡大は、利回りの源泉にもなり得ると考える。