ドル円

ドル円は大幅な変動を予想

ドル円が2022年年央予想値の1米ドル=116円に到達したため、今後数カ月間の円安ドル高余地を勘案し、見通しを修正した。

  • ドル円が2022年年央予想値の1米ドル=116円に到達したため、今後数カ月間の円安ドル高余地を勘案し、2022年3月の見通しを115円から118円、2022年6月を116円から118円に修正した。
  • だが、2022年9月と12月の116円予想は据え置く。世界経済の成長鈍化に加えて、日本の需給ギャップの縮小に伴い日銀がハト派姿勢を徐々に弱めるとみられるため、年後半はドル円の上昇余地は限られるだろう。
  • 円ショート(売り持ち)や円建て借入のポジションを持つ投資家には、ドル円が118~119円に向かう中での利益確定を勧める。

ドル円は大幅な変動を予想

我々は2022年3月と6月のドル円の見通しをそれぞれ115円から118円、116円から118円に引き上げる一方、2022年9月と12月については従来の116円予想を据え置く。この変更は、米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢を裏付けるような米国の経済指標が続き、2022年前半は円に対して米ドルがさらに上昇するとの我々の見方を反映したものである。

とはいえ、ドル円は年内に天井をつけると予想する。特に、円は実質貿易加重ベースで最低水準にあり、日本の政策当局が円安の悪影響に懸念を強めている模様だ。日銀の黒田総裁は12月23日の経団連での会合で、円安は総合的には日本経済にプラスの効果をもたらすが、さらなる円安が輸入物価の上昇を通じて家計に悪影響をもたらすことを認識していると述べた。実際、2021年11月の消費者物価指数の発表後から日本のインフレ動向に対する市場の注目が高まっている。11月の総合指数は対前年比で+0.6%だったが、携帯電話通信料の値下げによる寄与度(-1.5%)がなければ+2.1%に上昇しており、年末までに需給ギャップが縮小すれば日銀がハト派姿勢をいくぶん弱める予兆となる可能性がある。また黒田総裁の任期が2023年4月までであることから、次期総裁下でハト派姿勢が後退するのではないかと市場が年後半に向けて神経質になるかもしれない。こうした不透明感から円売りポジションの一部が買い戻されて、一段の円安に歯止めがかかる可能性がある。

また、2017~2018年のFRBの利上げ局面におけるドル円の値動きにも触れておきたい。図表1からわかるように、当時は政策金利と米国の名目および実質金利が着々と上昇していたにもかかわらず、ドル円は105~118円の広いレンジ内で推移した。この時の値動きが2022年のドル円相場のモデルになると考えており、FRBの引き締めサイクルにもかかわらず、ドル円はボラティリティ(変動幅)が増大し、大きく変動するだろう。

投資見解

見通し:2021年は円に対して米ドルが103円から115円へと大きく上昇したが、2022年はボラティリティの上昇を伴いながら広いレンジ内で横ばいに推移すると予想する。

レンジ:目先はFRBのタカ派姿勢から米ドルが対円で118~119円に上昇するが、リスクオフの地合いを受けて113~115円に下落する可能性もある。

リスク:オミクロン株が世界経済の見通しに重大な脅威となることが判明し、FRBが金融引き締めスタンスを修正せざるを得ない場合には、ドル円は一段と大きく調整し、105~110円のレンジにまで下落する可能性がある。

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本稿はUBS AG Singapore Branch および UBS Switzerland AG が作成した“USDJPY: Not a one-way street in 2022”(2022年1月7日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年1月11日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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