House View Weekly

オミクロン株に惑わされず継続保有

市場のボラティリティ(変動率)が再び上昇している。投資家が断片的な暫定データを元に、オミクロン株の影響を評価しようとしているためだ。

今週の要点

オミクロン株に惑わされずリスク資産を継続保有

市場のボラティリティ(変動率)が再び上昇している。投資家が断片的な暫定データを元に、オミクロン株の影響を評価しようとしているためだ。米国でオミクロン株の感染者が確認されたことや、新型コロナワクチンメーカーの最高経営責任者が既存ワクチンのオミクロン株に対する効果は従来株に対するものよりもはるかに弱いとの見通しを示したことが悪材料となり、先週市場は下落した。だが、リスク資産を性急に手放すことは避けたほうが賢明だ。我々の基本シナリオでは、オミクロン株は目先悪材料とはなるものの、市場の上昇を阻害するほどにはならないとみている。現時点での情報から、オミクロン株は世界経済がすでに乗り越えつつある足元のデルタ株感染の波に融合していくと予想する。このシナリオでは、政府はオミクロン株の感染拡大の抑制に向けて部分的な行動制限を講じるが、全面的なロックダウン(都市封鎖)には至らない。ワクチンに依然として十分な感染予防効果がある、または症状が既存の変異株ほど深刻ではないことが判明する、あるいは政府がロックダウンの代わりにブースター接種(3回目のワクチン接種)やマスクの着用などの手段を活用したリスク抑制策を選択する、といった状況を前提としている。このシナリオでは、市場が経済成長と企業利益の明るい見通しに再び注目する可能性が高い。

要点:こうした背景から、ユーロ圏、日本、エネルギー、金融など、足元で下落した株式市場やセクターの一部が今後アウトパフォームする可能性が高いとみている。この基本シナリオに基づき、世界経済の成長から恩恵を受ける勝ち組を引き続き推奨する。

パウエルFRB議長の発言は早期利上げを示唆するものにあらず

もう1つの悪材料は、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が11月30日の議会証言で、資産購入の縮小(テーパリング)ペースを早めることを検討すべきだと発言したことだ。議長はまた、最近の一連のインフレ上昇を「一時的」と呼ぶのはもはや適切ではなく、「高いインフレ率をもたらしている要因」もまた持続するとの見方を示した。こうした変節はあるものの、FRBが経済指標を確認する前にタカ派姿勢をさらに強めるとは我々は予想していない。その理由の1つは、テーパリングのペースを早めることは、可能性はあってもまだ規定路線ではないことだ。FRBが追加的な経済指標やオミクロン株の動向を注意深く見守る中で、パウエル議長の発言は適切なリスク管理を実践したものと見なすことができる。FRB高官は、12月10日に発表される11月の消費者物価指数(CPI)に加えて、オミクロン株の重症度や感染力について詳しい裏付けが出てくるのを待つだろう。もう1つは、11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録で「(フェデラル・ファンド金利の)目標レンジの引き上げには、資産購入ペースの減速開始に適用されたよりも厳格な基準が必要」と示唆していることだ。

要点FRBは経済成長を支援する姿勢を維持し、オミクロン株による行動制限が需要減退につながる場合には金融政策を調整すると予想する。利回りを追求する投資家にとって難しい環境が続くが、プライベート・クレジットなど非伝統的な市場に大きな上値余地があると考える。

オミクロン株についてはさまざまなシナリオを念頭に置く

オミクロン株に関する新たな情報と政府の対応は刻々と変化している。こうした環境下では、今後考えられるリスクをより冷静に評価し、性急な判断を避けることが賢明だ。上で述べた我々の基本シナリオに加えて、2つの弱気シナリオがある。1つ目は、オミクロン株がこれまでの変異株よりも著しく病毒性が高い場合だ。このシナリオではオミクロン株はワクチンが効かず、重症化を引き起こすため、政府は感染爆発を抑えるためにロックダウンに踏み切る可能性がある。そうなれば株式市場は10~15%ほど下落することが予想される。もう1つの弱気シナリオは、政府による行動制限がサプライチェーンの正常化を遅らせ、さらなる金融引き締めにつながるというものだ。金融政策の引き締めと景気減速の中では、プラスのリターンを計上できる資産クラスは多くはないだろう。投資家はポートフォリオを保護するために、ヘッジファンド、コモディティなどの資産クラスへの投資戦略に目を向けざるを得なくなるだろう。だが、強気シナリオも忘れてはならない。強気シナリオでは、オミクロン株はきわめて感染力は高いものの、感染しても軽症に収まると想定している。これは新型コロナウイルスがパンデミックからエンデミック(一定地域で日常的に繰り返し発生する状態)に移行していることを示唆するもので、政府は新型コロナウイルスをインフルエンザや一般的な風邪など他の呼吸器疾患のように扱い始める可能性がある。この場合、ニューノーマルへと急速に回帰し、サプライチェーンが回復するため、結果として現在高止まりしているインフレ率は低下するだろう。

要点:今後待ち受けるシナリオが科学的なデータの下で明らかになるまで、不確実性が高い間は冷静な対応を維持することが必要だ。オミクロン株の影響がより明確化すれば、中央銀行の対応を決定する一助となるだろう。こうした流動的な状況下では、ヘルスケアのようなディフェンシブ・セクターや、各市場が大きく変動し下落する局面でアウトパフォームすることが多いヘッジファンドなど、オルタナティブ資産が魅力的であると考える。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2021年12月6日付)を翻訳・編集した日本語版として2021年12月7日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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