グリーンテックの投資機会
ネット・ゼロへの道
気候変動目標を達成するにはグリーン・テクノロジー(グリーンテック)の開発・普及が不可欠である。グリーンテックには短期・長期双方の投資機会が見込まれる。
2021.10.20
地球はいまや危険地帯に変わりつつある。熱波、豪雨、干ばつなどの異常気象が頻発し、その被害も年々深刻になっている。二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量が記録的な水準に達した結果、この5年間の地球の気温は過去最高を記録した(図表1)。気候モデルによると、世界が2050年前後までにネット・ゼロ・エミッション(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を達成するまで、地球温暖化は悪化の一途をたどると予測されている。
この10年の間に、気候変動対策に取り組む国際的な機運が高まってきた。化石燃料並みのコスト競争力をつけてきた再生可能エネルギー発電の普及が大幅に拡大するなど、多方面で進展がみられる。電気自動車(EV)やエネルギー効率化の技術革新に加えて、政府や議会に対して環境に配慮した施策を求める社会的圧力が高まっていることも、ネット・ゼロの未来に向けた移行を加速している。だが、なすべきことは山積しており、いかに迅速に実行に移すかが最も重要な課題となるだろう。
世界平均気温は、ネット・ゼロを達成するまで上昇し続けると予測されている。だが、温暖化の進み具合は、この先どのようなペースでネット・ゼロに向けて二酸化炭素排出量の削減を加速させていくかに大きく左右される。世界の平均気温の上昇が1.5度か2.0度(またはそれ以上)かは大した差ではないように見えるかもしれないが、0.5度上昇しただけでも我々の生活には大きな影響が及び、人道的にも経済的にもリスクとなる。また、気温の上昇は地球上で均一に進んでいるわけではく、その影響の出現の程度は国や地域によって異なる。2021年11月開催の第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)は、2015年のパリ協定採択以降で最も重要な会議と位置づけられている。COP26を機に、気候変動リスクの緩和を目指す重要な規制措置、排出者の行動変容を促す炭素税、排出量取引制度などの政策、巨額のインフラ投資計画、グリーン補助金制度などの採用・導入が加速すると思われる。だが、最大の課題は、こうした表向きの方針と実際の行動との溝を埋めることである。
これは投資家にどのような影響をもたらすだろうか?今後数十年にわたり、エネルギー移行に向けた課題解決策の開発に巨額の資金が動員され、投資が行われることから、投資家にとっては魅力的な機会が生まれるだろう。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、さまざまな将来シナリオのモデル分析に基づき、これから2050年までの間に100兆~130兆米ドルの投資が必要になり、融資、債券、株式(上場およびプライベート)を通じで資金が調達されると予想している。こうした投資は計画の初期段階で重点的に投入される場合が多く、およそ40%が2021年~2030年に実施される見通しである。気候変動問題の解決に向けた技術関連企業が恩恵を受けると予想される一方、気候変動への適応が遅れた企業のコストは膨らみ、競争力を失いかねない。
過去10年における経済成長のけん引役は情報技術(IT)であったが、今後数十年は、政治・経済両面において、気候変動対策が世界の重要なテーマとなるだろう。
中短期的には、特に次の5つの分野に投資妙味があると考える。
• クリーンエネルギー
• エネルギー効率、デジタル化
• 電化・電動化、蓄電池
• バイオエネルギー
• グリーン金融
長期的には以下のような技術に新たな投資機会が見込まれる。
• 水素技術
• CO2の回収・利用・貯留(CCUS)