サステナブル投資

サステナブル投資の見通し

2021年のグリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンドの発行額は、昨年記録した過去最高を更新する見通しである。

  • 2021年のグリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンドの発行額は、昨年記録した過去最高を更新する見通しである。新たな発行体の登場で市場の分散化と流動性が高まると考える。
  • EUの気候変動政策パッケージ「Fit for 55」は、カーボン・クレジット市場、グリーンテック、グリーンボンド等にとって支援材料となるだろう。ただし、今回の計画は加盟国や欧州議会で承認されるまで数年単位の交渉が続くとみられており、まだ全容が決定したわけではない。
  • 今年の株主総会では、気候変動など持続可能性に関する株主提案への賛成が過年度より増えており、ESG関連が重要な議題として浮上している。
  • 期間5年で見ると、サステナブル投資(SI)指数は伝統的な指数と遜色のないパフォーマンスを示している。地域や戦略タイプによりパフォーマンスに差異がみられるため、分散投資が有益な効果を生むと考える。

本格化するサステナブル債券の発行に、市場インフラの整備が追いつかず

2021年のグリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンドの発行額は、昨年記録した過去最高を更新する見通しである。2021年6月末時点の総発行額はすでに約3,930億米ドルに達しており、年末には昨年の過去最高を更新するものと予想する。

投資家は供給過熱を懸念すべきだろうか?新しい発行体が増えれば分散効果や流動性の向上が見込まれるため、供給増は市場にとってプラスに作用すると我々は考える。サステナビリティ市場は成長の機が熟している。サステナビリティ問題に対する各国政府や規制当局の取り組み加速が、発行体と投資家の双方にとって適切な市場の枠組みの整備につながり、サステナブル債券市場のさらなる進展を促すだろう。

サステナブル債券市場は、普及が先行しているグリーンボンドを中心に発行額が伸びてきた。グリーンボンドは市場インフラも他の債券に比べて成熟している。国際資本市場協会(ICMA)が策定した「グリーンボンド原則」はグリーンボンド発行に関する自主的なガイドラインであり、透明性や情報開示等の要件に関する基準として発行体と投資家の双方に広く依拠されている。グリーンボンド原則は2014年に策定されて以降、随時改訂が行われ、2021年6月初旬に最新第6版が公表された。

最新版のグリーンボンド原則では、発行体の総合的なサステナビリティ戦略と取り組みに関する情報開示の透明性、プロジェクトと公的または市場のタクソノミー(持続可能な経済活動の分類基準)との整合性の情報開示、発行体による社会・環境側面の重要なリスクとそれに対応した緩和戦略の把握等の重要性を強調している。投資の実行可能性を十分に評価するためには、発行体の低炭素化に向けた移行(トランジション)戦略を明確に理解することが肝要であると我々は考えている。

だが、透明性の向上を求めれば複雑さが増大する。そのため、グリーンボンド原則だけでなく、ソーシャルボンド原則、サステナビリティ・リンク・ボンド原則、サステナビリティボンド・ガイドラインも、債券発行体のサステナブルな資金調達に対し、原則類への準拠状況について第三者機関の評価を受けることを推奨している。このため、セカンド・パーティー・オピニオン(SPO)を発行する外部評価機関のサービス需要が高まっている。ESG投資を取り扱う英ニュースメディア「レスポンシブル・インベスター」によると、市場の拡大とこのサービス需要の高まりを受けて、主要SPO提供機関による発行が需要に追い付かず、ここ数カ月でSPO取得に要する時間が倍増している。サステナビリティに関する情報と基準の整備を求める声は今後さらに広まるだろう。

投資機会

• 官民双方による事業運営の脱炭素化やカーボン・フットプリント(温室効果ガス排出量)削減の取り組みは、グリーンボンド市場に追い風となるだろう。カーボン・フットプリントの削減に必要な投資資金を資本市場で調達するケースが増えると考えられるからだ。また、各国の大手銀行は投融資ポートフォリオのカーボン・ニュートラル(CO2排出量実質ゼロ)に取り組む銀行のイニシアチブ「ネット・ゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」を発足した。これにより、金融機関によるグリーンボンドなどのサステナブル債券の発行増も見込まれる。運用ポートフォリオと自身のサステナビリティ目標を整合させたいと考える投資家も増えていることから、こうしたトレンドはグリーンボンド市場を下支えるだろう。

• 今回発表された「Fit for 55」を見ても分かるように、EUは環境問題への政策対応を加速している。具体的には、昨年採択されたEUタクソノミー規則に関して、今年4月には「気候変動の緩和」と「気候変動への適応」に貢献する経済活動の詳細な基準が公表された。グリーンボンドは、こうした規制変更に適応する主要な資金調達手段の1つになると考えており、これによりグリーンボンド市場の有効性、透明性、説明責任、比較可能性、信頼性が向上し、発行体と投資家ともにその恩恵を受けるとみている。投資に当たっては、最も高いグリーン基準を満たしていると評価されている発行体に注目することを勧める。

• 自社の事業活動や収益等にもたらすESG関連リスクおよび機会の開示・管理の面で、同業他社よりも優れているリーダー企業は、規制当局による審査・情報開示要件の厳格化に対しても相対的に少ない費用で対応が可能であり、追加的な透明性や新規制への適合が義務づけられても競争力を維持できるものと見込まれる。


本稿は、UBS Financial Services Inc. (UBS FS), UBS AG London Branch および UBS Switzerland AG が作成した“Sustainable investing Perspectives: Sustainable investing"(2021年8月8日付)を翻訳・編集した日本語版として2021年8月16日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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